専門家派遣制度を利用した期間
2024年7月~2025年3月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
社会保険労務士

本社: 東京都千代田区九段南3-7-7九段南グリーンビル9F
代表者名: 代表取締役 相澤 司 氏
設立: 1990年
従業員数: 6名
事業内容: 広告(SP)企画・制作。イベント企画・実施・演出・運営。映像ソフト企画・制作。各種印刷物企画・制作。デジタルコンテンツ企画・制作。ホームページ企画・制作。各種ギフト&プレミアム企画・制作。
専門家派遣制度を利用した期間
2024年7月~2025年3月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
社会保険労務士
すでに取り組んでいる健康経営をさらに発展させるために、どのような取組を行えばよいか、教えてほしい。
クライアントの営業戦略の企画サポートからイベントの企画運営、ロゴやパンフレットの作成、動画やノベルティの制作といった、広告の企画・制作に関連するさまざまなサービスを提供しているグリップアイ。プロデューサーやデザイナーなど6名が在籍している。
同社が健康経営に取り組み始めたのは2022年の終わり頃。代表取締役の相澤司氏が、商工会議所等を通じて健康経営を知ったことがきっかけだと、専務取締役の芦田誉氏は言う。
「さまざまなお付き合いの中で、多くの中小企業が健康経営に取り組み、経営面でよい影響を得ているということを弊社の代表が知り、当社もぜひ取り組もうということになりました。当時は新型コロナウイルスの感染拡大が落ち着き始めた時期。コロナ禍では従業員が新型コロナウイルスに罹って働けない期間があり、当社のように少数精鋭で事業に取り組む企業の場合、1人欠けた時のダメージが非常に大きいことを改めて実感した時期でもありました。従業員一人ひとりの健康を会社がサポートしたいと考えたことも、取組をスタートしたきっかけの1つです」(芦田氏)
芦田氏が健康経営推進担当となり、試行錯誤の末2023年に「銀の認定」を取得。2024年からアートディレクターの宮本遥氏が健康経営推進担当を引き継ぎ、「金の認定」を目指すことになった。しかし、「金の認定」を取得するために、現状の取組を具体的にどう発展させていけばよいかわからず、インターネットで検索したところ専門家派遣制度を知り、申し込むに至った。
「その後、当社の担当となった専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)の太田広江先生とお話しして、当社は従業員数が6名と少ないこと、また、『銀の認定』と取組内容で重なる部分が多いことを理由に、経済産業省の『健康経営優良法人』の方が金の認定よりも取り組みやすいのではというアドバイスを受け、そちらを目指すことにしました」(宮本氏)
健康経営エキスパートアドバイザーで社会保険労務士の太田広江氏は支援に際し、まず従業員に向けたアンケートを実施。その結果、「朝食の欠食率」、「野菜の摂取量(1日あたり)350g以上の割合」といった食生活に関する項目と、「歩数(1日あたり)が8000歩以上の割合」という運動に関する項目、そして「支援が必要な程度の心理的苦痛を感じる割合」というメンタルヘルスに関する項目の結果が、従業員数(アンケート実施者)が少ないため単純な比較は難しいものの、参考値に比べて思わしくないことを指摘した。
これらを改善するべく取り組んだのが、月に1回、社内の定例会議で健康に関する議題を1つ取り上げ、健康に関する情報提供を行うことだ。
「アンケート結果で指摘のあった食生活、運動、メンタルヘルスの3つのカテゴリーにわけて、順番に議題として取り上げました。例えば、食生活であれば果物の栄養価の解説、運動なら仕事中に行えるストレッチの紹介、メンタルヘルスには厚生労働省のメンタルヘルス・ポータルサイト『こころの耳』にアップされている5分ほどの研修動画を視聴する、といった具合です」(宮本氏)
情報提供に加えて、運動については、専門家派遣制度利用前から導入していた無料のウォーキングアプリを継続して活用。改めてアプリの活用と徒歩推奨を社内にアナウンスしつつ、月に1回、従業員の歩数をチェックして、一番多い従業員に食事をご馳走するという取組を継続して実施した。
メンタルヘルスについては、宮本氏が社内の相談窓口となり従業員の相談にのることを周知。加えて、「こころの耳」の相談窓口も周知して、従業員が悩みを抱えた際にいつでも相談を受けられる体制を整えた。
「今回もっとも重点的に取り組んだのは、メンタルヘルス関連の取組です。実はアンケート結果を見るまで、メンタルヘルスを社内の課題として大きく捉えてはいませんでした。食生活や運動に関連する取組は、『銀の認定』取得に際して行っていましたが、メンタルヘルスについては特に行っていませんでしたので、今回は会社として、メンタルヘルスケアの体制を整備しました」(芦田氏)
加えて、太田氏のアドバイスで行ったのが、健康診断の有所見者への再検査の受診勧奨と、再受診したかどうかを確認する面談の実施だ。これまで健康診断の受診率は100%だったが、検診結果を会社側で把握し再検査の受診勧奨をすること、また再検査の受診結果がどうであったかを確認するまでは、実施していなかった。
「再検査をお知らせする紙を渡したら、1カ月以内を目安に再検査を受けてもらいます。そして1カ月ほど経って、再検査を受診し終えた頃に、私と面談を行います。そこで再検査を受けたかどうか、その結果どうであったか等をヒアリングするというルールを決め、皆さんが再検査を受診するような仕組みをつくりました」(宮本氏)
さらに、太田氏の助言で健康経営推進の年間スケジュールを作成。健康診断や再検査、認定申請など健康経営に関連して取り組むべき事項をスケジュールにまとめることで、いつ、なにを実施すればいいのかを把握した。
専門家派遣終了時、太田氏が再度従業員向けに実施したアンケートでは、「朝食の欠食率」、「栄養成分表示を確認する割合」、「野菜の摂取量(1日当たり)350g以上の割合」といった食生活に関する項目、「歩数(1日当たり)が8000歩以上の割合」、「直近1週間の運動日数が週2日以上の割合」という運動に関する項目の数値が改善した。この数値の改善に加えて、ジムに通うなど運動を始めたり、食事の際に糖質を気にするようになったなど、健康経営によって従業員の行動や意識に変化が見られると宮本氏。
「ある定例会議で果物の栄養素について解説しました。果物にはビタミンやカリウム、食物繊維などが含まれており、塩分や老廃物を排出してくれ、高血圧やむくみ予防等に役立つことを伝えたのです。すると、これまで果物は単なるデザートという位置付けだったけれど、体に良い影響を与えてくれるなら、果物を食べるようにしようかな、と言っている従業員がいて。意識や行動が少しずつですが変わってきているなと感じています」(宮本氏)
メンタルヘルスに関しては、数値の面での改善は見られなかったが、「社長をはじめ経営層が、改めてメンタルヘルスケアの重要性を認識したというのは、大きな効果の一つだと思います」と芦田氏。この認識の変化が、今後のメンタルヘルスケアの取組拡充にプラスに働くことは間違いない。メンタルヘルスケアは今後の課題として、引き続き取り組んでいくつもりだ。
また、再検査の受診勧奨と面談を実施したことで、すべての有所見者が再検査を受診するようになった。宮本氏も面談を通じて、「これまで再検査になっても放置していた人が、健康診断の結果に対して、真剣に向き合ってくれるようになったと感じます」と、意識の変化を実感している。
一方、芦田氏は専門家派遣のサポートの一つとして行われた事前・事後のアンケートが、自社の課題を知る上で非常に役立ったと振り返る。
「当社のように人数が少ない会社で、会社主導でアンケートを実施すると、誰がどう答えたのか察しがついてしまう場合があり、従業員も正直に答えにくいと思います。ですが、第三者の立場から回答者がわからない形で実施していただいたことで、従業員が抱える健康課題を浮かび上がらせることができました」(芦田氏)
太田氏とともに作成した年間スケジュールの助けもあり、取組は順調に実施され、目標としていた経済産業省の「健康経営優良法人」認定は、2025年3月に取得した。今後の課題について、「まずは継続です」と宮本氏は言う。
「メンタルヘルスケアに関する取組を充実させることに加えて、すでに行っている食事や運動に関する取組も、今後は違う角度からアプローチしていきたいですね。例えばアプリを活用したウォーキングの促進についても、すでに2年近く実施しているため、皆さん競い合う気持ちが弱くなってきています。私1人が健康経営の推進役を担ってもアイデアは枯渇してしまうので、もう1人担当者を増やしてアイデアを出し、これまでとは異なるアプローチをとりながら、健康経営を継続していきたいと考えています。すべてのアプローチが全従業員に響くとは思いませんが、こちらが数を打つなかで、自分に合う取組を一つでも見つけてもらえたら嬉しいですね」(宮本氏)
定期的な情報発信や面談の実施等によって、従業員の健康に対する意識や行動が少しずつ変化しているグリップアイ。健康経営を継続して従業員一人ひとりがより健康になることで、人数は少なくとも個々の能力が高く、また、連携に優れた強い企業へと成長していくはずだ。
健康経営エキスパートアドバイザーより