東京商工会議所

フェリコ株式会社

美容業界の課題を乗り越え、
健康で長く働ける会社に
各分野の専門家の助言で健康経営の取組をレベルアップ

  • 組織・体制づくり
  • 喫煙
  • 睡眠
  • こころの健康

フェリコ株式会社

本社:世田谷区三軒茶屋1-37-13 オアシス三軒茶屋ビル3階

代表者名: 代表取締役社長 赤羽亜希 氏

設立: 2015年

従業員数: 11名

事業内容: ヘッドスパの専門店「希翠」の運営

  美容師の国家資格を持つスタッフによる「ヘッドスパ」を提供している。店舗以外に企業の顧客や社員を対象にした派遣型ヘッドスパにも力を入れる。

専門家派遣制度を利用した期間

2018年10月~2019年2月

支援専門家

・中小企業診断士
・社会保険労務士
・保健師

専門家派遣制度を利用したきっかけ

起業から取り組んできた健康経営のレベルアップと認知度向上を図るため、健康経営優良法人認定取得に向けた助言が欲しい。

「当社を起業する前に15年間美容業に携わり、気になっていたことがありました。入社時は元気で頑張っている女性たちが20代後半に差し掛かると体調が悪くなりがちで、急に休み、他のスタッフが慌ててサポートに入ることがよくあったことです。また、日々の業務が忙しすぎて、結婚すると仕事と家庭の両立ができず辞めざるを得ない現実もありました。フェリコは、社員が心身ともに健康で、細くても長く働ける会社でありたいと願っています。サービスを提供する側が元気で温かい気持ちを持ってこそ、お客様に健康と幸せを提供できるからです」
会社のコンセプトと背景をこのように説明する赤羽社長は、美容業界の課題を乗り越えようと、健康経営を学び、社内に展開していった。
ただ、最初の1年は「口頭で説明を重ね、自ら実践しても、それほど関心をもってもらえない」状況だったという。また、長時間労働を避けるために営業時間も短めに設定したが、会社の利益を考えれば、営業時間を延ばして売上を稼ぎたいというジレンマも当然あっただろう。
しかし、赤羽社長は「葛藤や不安はありつつも、貫いてみよう」と健康経営の継続を選択。派遣型ヘッドスパサービスで取引する大企業が健康経営に踏み出し始めており、健康経営が社会の大きな動きになってきたことも後押しとなった。
「食生活に課題があったので、食後のインシュリン値やドリンク類に含まれる砂糖の量の情報掲示などから始めました。気づいてもらえるよう工夫して、行動変容のきっかけになる仕組みを意識しました。」広報担当の坂元チカコ氏は、当時を振り返った。
さらなるレベルアップと認知度向上のため、2018年に「健康企業宣言」を実施。健康優良企業「銀の認定」と健康経営優良法人の認定を目指すにあたり、まだまだ対応が不足している項目があると考え、専門家によるサポートを依頼した。

代表取締役社長 赤羽 亜希 氏
代表取締役社長 赤羽 亜希 氏
広報担当 坂元 チカコ 氏
広報担当 坂元 チカコ 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● 労務管理制度の整備
  • ● 禁煙、睡眠など生活習慣の改善に向けたセミナーの実施
  • ● メンタルヘルス対策の強化
  • ● 健康経営の推進に活用したいサポート機関に関する情報提供

屋代勝幸氏(中小企業診断士)は、これまでの取組についてヒアリングを行い整理し、各種認定の取得要件を確認。取組が不足していて強化すべき点を明確化したうえで、その対策を支援した。
まず、労務管理について、同社は従業員が長時間労働をしないような労働環境を整えてきたが、労務管理制度に関する相談先がなく、就業規則はインターネットを参考に作成していたため、必ずしも実態に則した規定となっていなかった。
そこで、八巻裕香氏(社会保険労務士)が、労働時間の考え方、労働時間の把握・管理方法、年次有給休暇簿の活用など、必要な対応策について具体的に説明を行った。また、現在の就業規則の内容に対する助言を行い、規則の適用範囲の整理や改正を進めた。
食生活改善については、同社で進めてきた取組が実を結び始めていたが、禁煙、睡眠など、20代から気を付けたい生活習慣には手が回っていなかった。そこで、折居恵子氏(保健師)が、禁煙と睡眠をテーマにしたセミナーを実施した。
同社は事業所内人員が50名未満であり、ストレスチェック制度の導入は必須ではないが、メンタルヘルス面でのサポートによりさらにバランスが取れた健康経営が推進できると、ポータルサイト「こころの耳」の紹介などの情報提供を通して、同社に合ったメンタルヘルス対策の検討を促した。
その他、今後も健康経営を進めるにあたり、中小企業が活用したい外部リソースとして、地域産業保健センター、協会けんぽの各種サービスなどの紹介を行った。

喫煙に関するセミナーの様子
喫煙に関するセミナーの様子
取組による効果、今後の展望
  • ● 健康経営の取組が深化し、顧客サービスの付加価値向上、さらには従業員の「働きがい」の向上につながった。
  • ● 健康優良企業「銀の認定」「健康経営優良法人」認定の他、2021年「ブライト500」にも選出され、自社の発信力が向上した。

専門家の支援により、労務管理や生活習慣など多角的に取組を強化した結果、健康優良企業「銀の認定」と「健康経営優良法人」の認定を受けた。2021年にはさらに「ブライト500」に選ばれた。小規模の美容業では快挙といえる。
坂元氏は、「専門家の方には次に何をしていけばよいか、自社の状況を踏まえて相談でき、申請に関しても手順やステップがわかりやすかった」と話す。
特にメンタルヘルス対策としては、専門家の助言の後、出退勤時に健康に関するアンケートに答えてから打刻するシステムを導入しスタッフの意識と行動変容を促している。さらに、「ストレス疲労計測器」も導入した。心拍と脈拍で自律神経の状態を診断する機器で、副交感神経と交換神経のバランスからうつ病のリスクを可視化できるものだ。この機器は顧客向けにもオプションサービスとして提供しており、ヘッドスパ後の効果も測定値の変化で示すことができる。
スタッフ自身が食事やストレスなど健康促進への知識を深め自ら実践してきたことから、顧客に対しても情報を提供でき、付加価値向上につながっている。また、スタッフが健康で顧客からも喜ばれる好循環が生まれて、スタッフの『働きがい』にもつながっている。
美容業界・小規模企業では珍しい健康経営の推進企業として注目度も上がっており、メディアなどへの露出も増えている。

活動量計とアンケートの出退勤システム
活動量計とアンケートの出退勤システム
ストレス疲労計測器
ストレス疲労計測器

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 取組の早い段階で本事業の申込みを行い複数の専門家のアドバイスを受けたことは、社内の課題を明確にし、取組みの推進に大いに役立ったと思います。また、赤羽社長はじめスタッフの皆様が、真摯に実直に取り組まれたその成果として、快挙ともいえるブライト500認定につながったことでしょう。健康経営は認定されてからがまさにスタートです。今後も業界、小規模企業の希望の星として、ますますの発展を期待しています。
  • 屋代 勝幸 氏(中小企業診断士)
  • 従業員の皆様が健康で長く働ける職場環境の整備に向けて、訪問当日は、各規定の確認や助言に加え、労働時間の考え方や管理方法など、労務管理に必要な方策について説明を行いました。今後も健康経営の推進企業として、同社のさらなる飛躍を期待しています。
  • 八巻 裕香 氏(社会保険労務士)
(取材:2021年10月)