専門家派遣制度を利用した期間
2023年1月~2023年10月
支援専門家
中小企業診断士・社会保険労務士
本社: 東京都羽村市五ノ神4-14-1 ルミエールM1F
代表者名: 代表取締役社長 山下 敬一 氏
設立: 1969年
従業員数: 22名
事業内容: プロパンガス供給販売、管工事ならびに電気工事、ガス機器の販売、それらに付帯する一切の事業
専門家派遣制度を利用した期間
2023年1月~2023年10月
支援専門家
中小企業診断士・社会保険労務士
会社主導で健康経営に取り組むにあたり、具体的なアドバイスが欲しい。
西多摩地区を中心に、プロパンガスの供給販売等を行う武陽液化ガス株式会社。都市ガスを取り扱う武陽ガス株式会社のグループ会社として1969年に創業し、以来、武陽ガスと共に地域の生活インフラを支えている。
武陽ガスが健康経営に取り組み始めたことがきっかけで健康経営をスタートしたという同社。代表取締役社長の山下敬一氏は、取組を決めた理由を次のように振り返る。
「経営の一環として、会社が主導して従業員の健康をサポートしていくという点が素晴らしいと感じました。従業員が健康で元気に、また何の憂いもなく働くことができれば、お客様に喜んでいただける良い仕事につながります。当社は、『お客様が喜ぶ良い仕事をする』を第一に掲げておりますので、そのためにも、従業員の健康は非常に重要な要素の一つだと考えていました」(山下氏)
まずは健康優良企業「銀の認定」取得を目標に、管理部経理課課長の髙野茂久氏、同課の會田尚貴氏を中心メンバーに据えて取組をスタート。認定取得を目標に掲げることによって、「社内に、健康経営推進の流れをつくろうと考えました」と、山下氏は言う。
「ただ単に『健康になろう』と声かけをしても、それだけではなかなかうまくいきません。そこで、『認定を取得しよう』という目標を掲げると、従業員は、その流れに乗って取り組みやすくなる。認定制度を良い意味で利用させていただきました」(山下氏)
専門家派遣制度については、こちらも武陽ガスが先行して利用していたことから、同社も申し込むに至った。健康経営の推進と、「銀の認定」取得を目指すにあたって、専門家から具体的なアドバイスがもらえることを期待して申し込んだ。
専門家の河﨑展生氏(中小企業診断士・社会保険労務士)のアドバイスを踏まえながら、重点的に行ったのが、従業員の健康意識を醸成する取組の実施とメンタルヘルスケア体制の整備だ。
健康経営に取り組む以前は、会社側から従業員に対して、健康に関する情報を提供する場は設けていなかった。そこで、月に1回全従業員を対象に行っていた保安教育(高圧ガスを取り扱う企業に義務付けられている従業員教育)の場を活用して、健康に関する研修を実施。「健康会議」と題して、2カ月に1回程度、栄養や食生活等、健康に関する内容の研修を行った。
「厚生労働省の『健康日本21』で推奨されている野菜、果物、食塩摂取量を共有するなど、信頼できる公的な機関の情報を参考にしながら、研修を実施しました」(會田氏)
また、健康会議では座学に加えて、簡単な運動や体力測定など、従業員が楽しみながら体力づくりに取り組める機会も提供した。
「目をつぶって片足で何秒間立っていられるか計測したり、『椅子座り立ちテスト』といって、背もたれや肘掛けなどを使わずに椅子に座る・立つを30秒間で何回できるか計測したりしました。簡単な運動ではありますが、自分の体がどのくらい動くのか、平均と比較してどの程度動けているのか、という現状を知ると、もう少し運動しなくては、と心がけるようになるものです」(山下氏)
その他にも、食品メーカーが提供する推定野菜摂取量の測定機器や、血管年齢が測定できる機器を使用してみるなど、様々な方法で従業員が健康への意識を高める機会を提供した。
加えて、健康に関する情報を掲載したチラシ「健幸通信」を従業員全員に配布。これはグループ会社の武陽ガスが作成したチラシに、武陽液化ガス独自の情報をプラスして作成したもので、「腎機能を守る生活習慣・減塩」「免疫力を上げる食事」「アルコールの飲み過ぎ注意」といった情報を掲載した。
「紙で配布することによって、従業員がその場で読むだけでなく、自宅に持ち帰って、従業員の家族と共有する。それが健康に関する会話につながればと考えました」(髙野氏)
オフィスには血圧計、体脂肪計を導入し、いつ、誰でも使用できるようにした。血圧については毎週月曜日、従業員全員が測定するように定め、各人が数値に大きな変化がないか確認することを習慣にした。
「医師による医療行為のような取組は、会社にはできません。会社ができることは、従業員が健康を心がけるようになるきっかけを、継続的に提供していくことだと思います」(山下氏)
さらに、これまで行っていなかったメンタルヘルスケア体制の整備も行なった。高野氏が受付となり、相談窓口を設置。合わせて、メンタルヘルスに関する相談を受け付けられる体制が整ったことを社内に周知した。実際の相談対応については、保険会社が提供するメンタルヘルス相談サービスを活用。従業員が電話およびメールで、メンタルヘルスの専門家に相談できるようにした。
専門家派遣の事前・事後に行った従業員アンケートの結果を比較すると、「栄養成分表示を確認する割合」が18%から53%に増加した。様々な形で提供してきた〝きっかけ〟が、従業員一人ひとりの健康に対する意識を高めた結果だといえるだろう。
取組の効果は数値以外でも感じている、と山下氏。
「普段の会話の中に、健康に関する話題が増えたと感じますね。例えば血圧を測っていると『今日の数値はどうでしたか?』と聞かれたり、健康会議を行えば『次はどんなことをやりますか?』と質問されたりします。また、当社では『図書研修』という、一人の従業員が選定した本を従業員全員で読んで話し合うという取組があるのですが、そこで、健康に関する本を選ぶ従業員が出てきたのです。健康の大切さが従業員にだいぶ浸透してきたことを実感しています」(山下氏)
また、メンタルヘルスケア体制を整備したことで、不調者が出てしまった際に適切に対応できる体制が整った。現在メンタルヘルスの問題を理由に休職等をしている従業員はいないが、従業員がより安心して働ける環境が整ったといえるだろう。
専門家の河﨑氏のサポートもあり、目標としていた健康優良企業「銀の認定」、さらには経済産業省の「健康経営優良法人」認定も取得。今後について山下氏は、「気負わず、長く続けていきたい」と笑顔を見せる。
「認定を取得することは、時に取組のゴールのように思われてしまいがちですが、そこが次のスタートラインだと思っています。健康経営の取組は、実際の社内の運用の中で、それ以前から行っている取組などに合わせながら、無理なく、しかも継続的に行うことが重要です。同じ取組でもマンネリ化しないよう、ちょっとした変化を加えながら、継続していけたらと思います」(山下氏)
山下氏の言葉からも伝わるように、同社の取組は日常に健康経営がしっかり定着している好例だといえよう。この積み重ねが従業員一人ひとりの健康へとつながり、さらには『お客様が喜ぶ良い仕事』につながっていくに違いない。
健康経営エキスパートアドバイザーより