東京商工会議所

株式会社Al-pha

認定取得などの形にとらわれず、
自社の従業員になじむ取組を実践
若い従業員にも健康について考える機会を提供

  • 健康診断
  • 運動

株式会社Al-pha

本社: 東京都新宿区西新宿7-7-26 ワコーレ新宿第一ビル513・514

代表者名: 代表取締役 林 泰造 氏

設立: 2017年

従業員数: 16名

事業内容: イベントプロモーション、人材派遣、ホームページ制作

  キャンペーン・展示会・イベント・セミナーなどのプロモーションに関して 、企画立案・資材手配・運営・ツール製作・スタッフ調整などを一括して行うイベントプロモーション部門と、WEBマーケティングやホームページ制作を行うIT部門の2事業を行っている。

専門家派遣制度を利用した期間

2021年12月~2022年3月

支援専門家

保健師

専門家派遣制度を利用したきっかけ

若い従業員たちのためになる取組を、健康経営の専門家に教えて欲しい

企業の展示会出展や、商品宣伝のキャンペーンといったイベントプロモーション、人材派遣、ホームページ制作等を行うAl-phaは、16名の従業員が全て40代以下で、そのうち10名が20代、2名が30代、4名が40代という、若年層中心の構成だ。また、在籍する女性従業員は6名全員が20代である。
同社のように、若手が中心に活躍する活気のある企業であれば、従業員は皆、当然健康であると思ってしまいがちである。代表取締役の林泰造氏も、従業員の健康に対して「特に表面化した問題もなく、課題を感じていなかった」と言う。そんな林氏が健康経営を知り、取り組んでみようと考えるようになったのは、健康経営エキスパートアドバイザーの村田陽子氏(保健師)との出会いがきっかけだ。
「お仕事で偶然知り合った、村田先生とのお話の中で、初めて健康経営の考え方を知りました。ただ、その時は正直なところ、私自身にも従業員にも特段、健康課題がなかったため、自社にとっての必要性については、あまりピンときていませんでした。ですが、信頼する村田先生のお人柄もあって、詳しく話を聞くうちに、いつも頑張ってくれている従業員のためになる取組ができればと考え、具体的な方法を教えていただくため、まずは専門家派遣を受けてみることにしました」(林氏)

代表取締役 林 泰造 氏
代表取締役 林 泰造 氏
専門家派遣による支援と取組
  • ● 保健師による1対1の健康相談
  • ● 歩数計アプリの導入

専門家の村田陽子氏(保健師)と相談し、同社がまず行うことにしたのが、村田氏による従業員の健康相談だ。
「自社の場合はどんな取組をするべきか、と村田先生と話し合っていく中で、まず自分の健康状態を一番考えるのは健康診断の結果を見る時だろう、と思いました。健康診断の結果は、少し数値が悪くても、再検査の通知等が来ない限りは、ネットで調べる程度で、気にはなっていてもそのまま放置してしまいがちです。若い従業員ならなおさら、自分で病院に行くほどではないけれど少し気になる、という結果があるのではと。そんなことを女性従業員に話すと、やはり健康診断の結果について『ちょっと気になるところはあります』と言うのです。だったら村田先生に相談できる機会を作れたら良いと思いました。最終的には5名ほど、村田先生による個別の健康相談を受けました」(林氏)
村田氏は、健康診断の結果をもとに、従業員が少し心配に感じている項目についての解説のほか、従業員が日頃抱えている健康面での問題についても丁寧にヒアリング。受診の必要性や、食事や運動といった生活習慣の改善など、各人に合わせて適宜アドバイスを行った。
林氏は経営者として、従業員の健康を管理する立場ではあるものの、特に女性従業員の健康状態に関しては、センシティブな内容であり、「健康診断の結果がどうだったかも含めて、なかなか、突っ込んで話を聞くことはできていませんでした」と言う。そこに、女性であり看護師のキャリアも持つベテラン保健師の村田氏による、専門性を活かした効果的なサポートを行うことができた。
もう一つの取組は、従業員の運動不足解消に向けた、歩数計アプリの導入だ。同社の場合、営業スタッフやイベント運営を行うスタッフは、就業中もよく歩いているが、IT部門のスタッフはほとんどがデスクワークで、就業中に体を動かすことが少ない。そこで、無理なく体を動かすことができる取組としてウォーキングが良いと考え、歩数測定が可能なアプリを社内で紹介した。
「今はアプリの紹介にとどまっていますが、今後は全社的に何かしたいと考えていて、単純にアプリで歩数を測定するだけではなく、社内で歩数を競って、1位になった人には会社から商品を渡す、といったイベントにするというのは、とても面白いなと思っています。従業員皆で楽しめるというのがいいですよね。それまでは、『健康経営』と言われると、例えば就業前にランニングをしたり、少し早めに仕事を切り上げて皆で運動をしたりするなど、皆で集まって運動をする時間を確保して何か特別な取組をする必要があると思っていました。でも、日々の業務の中に運動機会を盛り込んでいく、これが健康経営ですよと村田先生から教わり、取組へのハードルが下がりました」(林氏)

取組による効果、今後の展望
  • ● 従業員が抱えていた自身の健康状態に対する不安が解消された。
  • ● 健康相談により、従業員の健康への関心が高まり、健康診断の受診率が向上した。

今回の専門家派遣による一番のメリットは「従業員の健康不安が解消され、喜んでもらえたこと」だと、林氏は言う。
「村田先生による健康相談を受けた女性従業員は本当に満足した様子で、『またこのような機会があれば相談したい』と言っていました。彼女が抱えていた不安が解消されたようで、本当に良かったですね」(林氏)
専門家派遣というと、もっと機械的な対応なのではと考えていたそうだが、村田氏は同社のケースをよく吟味し、親身になって丁寧に対応してくれたことが、「期待していた以上でした」と林氏は振り返る。
今後とも、毎年の健康診断後に個別の健康相談を恒例化することも、従業員の健康を守る上で大切かもしれないと考えているという。福利厚生の、その先の取組として検討中だ。
また、健康診断の受診率の向上も見られた。これまでも、健康診断は会社で健診機関を予約し、勤務時間中に受診できるようにしていたが、業務の多忙さやスケジューリングの手間から、また、若さゆえに健康課題をあまり感じていなかったためか、受診率は4割程度であった。それが、健康相談の取組により従業員の健康への関心が高まったようで、受診率は7割近くまで向上した。
今後については、「何か楽しみながら運動イベントが行えたら」と林氏。歩数計アプリを活用したイベントを模索中であり、また、取引先企業を巻き込んだゴルフコンペなども構想中だ。
「健康経営を絡めて、取引先のお客様も参加できる運動イベントを開催するのも、おもしろいかなと考えています。健康のための運動機会増進として行うとなれば、お客様も気持ちよく参加できるでしょうし、さらに企業間のコミュニケーションの活性化にもつながり、ビジネスの機会にも繋がるかもしれません」(林氏)
特別な手間をかけるわけではなく、日々の業務の中に、従業員になじむ形で、少しずつ健康への意識を盛り込んでいけば良い、と林氏の健康経営に対する認識も、ポジティブな方向へと変化しているようだ。
もともと、若い従業員が多く、活気のある同社だが、健康経営の認定取得などの形にとらわれずに、どうすれば従業員のためになるか、何をすれば従業員が喜んでくれるか、その思いを一番大切にする社長のもとであれば、従業員皆がより一層力を発揮していけるに違いない。

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • 専門家派遣に入った際の印象は、会社にとって社員は大事だけど、社員を大事にするためには何を、どう取り組めば良いのか分からない。コロナ前は一緒に食事に行って積極的にコミュニュケーションをとっていたようですが、それ以上のことは思い浮かばない状態のようでした。また、社員の健康データは個人情報なので、会社の総務や社長がその結果を見るのは問題だろうと遠慮していたこと。社員は若いので健康にそこまで興味関心がないだろうと、会社が社員の健康に取り組む必要性を感じていない点が、同社の課題だったと思います。
    社長からヒアリングさせていただく中で、会社の良い点、社長が努力している点を確認した上で、健康経営という視点で社員のことを考えてもらう機会にしました。
    その中から、希望社員に対して健康診断結果をもとに健康相談を行ってみること。営業職以外の人の運動不足が気になるという課題に対して、社長に対して社員と一緒に楽しく取り組めることを、皆で考えて欲しいとアドバイスしました。
    相談を希望してくれた社員からは、健康診断結果を前に自分の生活習慣を振り返るきっかけになった、年に1回、こうやって自分のことを見直すのは大事ですね、と感想を言われました。さらに、このような機会を作ってくれる社長は自分たちを大事にしているのだと感じたと話していました。
    社長は運動するための取組をアプリでやってみようと、全体会議で提案したようですが、社員からゴルフについて提案があったので検討していると話していました。そこから察するに、社長の押しつけではなく、皆で考えて楽しくできることを実践しているのだと思います。
    なんと言っても社長が社員を大事にしたい、一緒に気持ちよく働きたいという気持ちが元々あったことが、取組が成功したポイントです。さらに、会社のリーダーである社長自ら指揮をとったことと、社長の押し付けではなく、社員の意見を聞いて一緒に取り組もうとしたことが良かったのだと思います。健康相談も希望者からという心遣いが成功の秘訣だったと思います。
    今後に向けてのアドバイスは、継続することです。トライアンドエラーで失敗してもそれは学びとして、新しい方法、皆が楽しめることを、社員参加型で進めていただければ、どこにもないユニークな健康経営が実践されていくと思います。
  • 村田 陽子 氏(保健師)
(取材:2022年12月)