専門家派遣制度を利用した期間
2024年7月~2025年6月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
中小企業診断士

本社: 東京都大田区城南島2-6-1
代表者名: 代表取締役 小野 利郎 氏
設立: 1971年
従業員数: 85名
事業内容: 冷凍・冷蔵倉庫業・貸物利用運送業及びその他関連業務。
専門家派遣制度を利用した期間
2024年7月~2025年6月
支援専門家(健康経営エキスパートアドバイザー)
中小企業診断士
どのようにして健康経営に取り組み始めればよいか、専門家の助言がほしかった。
顧客から預かった食品等を冷蔵倉庫に保管、そこから出荷・運送をする冷蔵倉庫業をメイン事業として行うキョクヨー秋津冷蔵。本社である東京の城南島事業所、東京事業所、福岡にある福岡事業所の3つの倉庫を持ち、昨今では冷凍設備を利用した輸出事業も堅調に伸ばしている。
同社が健康経営に取り組もうと考えたのは、2024年の夏頃。「職場の労働衛生対策に、健康経営が役立つのではないかと考えました」と、代表取締役の小野利郎氏は振り返る。
「2021年に代表に就任した当時、特に気になったのが、年に1回実施しているストレスチェックの数値がよくないことでした。加えて、物流業も御多分に洩れず人員採用が非常に厳しいという状況があり、従業員が安全で快適に働ける、魅力的な職場づくりが急務だと考えました。そこで、まずは安全衛生活動に取り組もうと、2022年に委員会を発足しました。おかげさまで職場の安全面、いわゆる労災が起きないような環境づくりは順調に整えられていったのですが、従業員の快適な職場環境を指す〝衛生面〟は、なかなか進んでいかず。そんな折、メディア等を介して健康経営のことを知り、これに取り組めば衛生面も解決されるだろうと、取組をスタートしました」(小野氏)
しかし、具体的にどのような取組を行えばいいのか、なんのアイデアもなく悩んでいたところ、インターネット検索で専門家派遣制度のことを知り、申し込みをした。
健康経営エキスパートアドバイザーで中小企業診断士の北畑亮氏は、まず従業員を対象に健康への意識や生活習慣を問うアンケートを実施。その結果、「朝食の欠食率」が高いこと、「歩数(1日当たり)が8,000歩以上の割合」が低いことを指摘した。
このアンケート結果を受けて、同社がまず実施したのが、朝食の代わりとなる食品の提供だ。
「まずは朝食を食べる習慣を身につけてほしい」(小野氏)という狙いで、東京事業所では週に3回、城南島事業所では週に2回、オフィスの一角にスペースを設け、誰でも手に取れる形で食品を提供することとした。城南島事業所では、健康経営推進の役割を担う総務部次長兼人事厚生課長の秦真由美氏が、配布する食品を選定しているという。
「最初は、栄養補助食品のゼリーやシリアルバーなどを置きました。社員はもちろん、派遣でいらっしゃる従業員の皆さんにも好評です。ずっと同じものでは飽きてしまうので、プロテイン入りのヨーグルトを置いてみたり、カルシウムや鉄分の入ったスナックを選んだりなど、工夫をしています」(秦氏)
運動不足解消に向けては、半年間にわたるウォーキングイベントを実施。1日6,000歩、一月に18万6,000歩を6カ月間達成すれば、会社から褒賞が出るという仕組みだ。こちらも東京事業所、城南島事業所で実施され、23名中21名の従業員がイベントに参加し、21名全員が目標を達成した。
また、健康経営を始める前から気になっていたという、従業員の腰痛対策にも着手。室温が10度程の冷蔵倉庫内での作業は、体が冷えやすく、基本的には立ち作業だ。また重い荷物を持ち上げることも多く、腰に負担を感じる従業員は複数いる。
小野氏がまず導入したのが腰痛ベルトだ。腰に巻くことで負担が軽減するもので、5本購入。次に導入したのが、立ちっぱなしの作業を防ぐ椅子だ。スーパーのレジ等でも採用されており、倉庫内でパソコン作業やシール貼りといった作業をする際に、気軽に腰掛けられるようにした。また、立ちっぱなしでも足腰に負担がかかりにくいよう、スポーツメーカー製の安全靴を導入。さらに防寒対策として、腰に貼る使い捨てカイロや、靴の中に入れられる使い捨てカイロなどを配布した。
加えて福岡事業所については、施設の老朽化もあり、倉庫内の床を塗り替えた。フォークリフトを運転する際の振動を減らすことで、腰への負担を軽減する狙いだ。
さらに、東京事業所の休憩室をリニューアル。少しでもリフレッシュをして、疲れの取れる空間になればと、座布団やクッション、ちゃぶ台などを配置した。
これらの取組は、各事業所に3名ずついる健康経営担当者のアイデアが大きいと、小野氏は言う。
「各事業所で取り扱っている商品も違えば、業務形態や通勤形態、設備なども違うため、それぞれ自分達の事業所にあった取組を実施していくのがいいだろうと。その前提で、どの事業所でどんな取組が可能なのかを考えながら、進めていきました」(小野氏)
北畑氏が専門家派遣終了時に行ったアンケートでは、「朝食の欠食率」、「歩数(1日当たり)が8,000歩以上の割合」ともに大きな改善は見られなかった。しかし、同社が城南島事業所の従業員を対象に独自に行った「朝食アンケート」の結果からは、従業員の朝食に対する意識が改善されていることがわかった。特に「朝食配布日以外でも朝食を摂るようになりましたか?」、「今後会社からの朝食の提供がなくなっても朝食を摂ろうと思いますか?」の問いには、ほぼ全員がイエスと回答しており、朝食を食べることがしっかりと定着してきていると言えそうだ。
ウォーキングイベントに関しても、開催後、明らかに従業員の運動への意識が変化していると、小野氏も秦氏も感じているそうだ。
「これまで全然歩かなかった同僚が、イベントをきっかけに歩くようになって、『今日は夫婦で、◯◯まで歩いて買い物にでかけた』など、話をしてくれるようになりました。それがすごく楽しそうで、イベントが終わっても、楽しんで歩いてくれるのではないかなと思っています」(秦氏)
「イベント実施後、何人かの従業員からは『今後も継続したい』という声がありましたし、イベントが終わってからも引き続き運動をしているとか、並行して禁酒を実施していますといった声も届きました。みなさん、いい機会だったと感謝してくれていて、こちらとしても、実施してよかったと実感しています」(小野氏)
腰痛対策のうち、腰痛ベルトは利用者が伸びず定着しなかったが、その他の取り組みは従業員から好意的に受け入れられているという。特に椅子は「最初は使われていなかったのですが、いまでは手放せなくなっているようです」(小野氏)と言い、快適な職場環境の一要素として、すっかり定着していると言えるだろう。
今後の目標は、引き続き従業員が安心、安全で、快適に働くことができる職場を作っていくことだ。加えて、職場環境により採用力を強化することも目指していく。現在は、独自アンケートを通じて、従業員が何を求めているのか、それに対して会社がどんな対応をしていけるのか、考案中だという。
従業員一人ひとりと向き合い、本音を引き出して、そこに応える取組を実施する好事例だと言えるだろう。
健康経営エキスパートアドバイザーより