糸でつなぐ歴史と未来 | 金亀糸業株式会社

糸でつなぐ歴史と未来 | 金亀糸業株式会社

企業概要

企業名
金亀糸業株式会社
創業年
1893年(明治26)年
所在地
東京都中央区東日本橋1-2-15
代表者名
栗田和雄(取締役社長)
資本金
2340万円
売上高
8億2860万円(平成26年3月期)
従業員数
33名
業種
糸・パッチワーク関連用品・布地の企画・卸・輸出入、シルク製品の企画・卸
HP

1.タイヤ販売から手芸用品大手へ

取締役社長の栗田和雄氏 栗田和雄社長

栗田和雄取締役社長にお話を伺いました。

■近江から上京

1893(明治26)年、初代栗田直太郎が上京し、日本橋富沢町で創業した「栗田糸店」が始まりである。栗田家はもともと近江の出身で、直太郎は長男だったが、当時としては珍しく家督を姉に譲り、上京したという。創業当時は主にタイヤを販売していたが、京都の糸会社で修業をしてきた人材が入社したことを契機に、家庭用必需品として縫糸の販売へと多角化したことにより、事業が発展した。

■和裁縫糸が主力に

当初、中心となっていたのは和裁用の縫糸で、呉服の仕立て糸の取り扱いが主軸だった。2代目の栗田英太郎は、縫糸の染色加工・製品加工の工場を神奈川県内に設立。「絶対的品質の商品を、自信を持って提供する」をモットーに、絹の中でも一番品質の良いものを扱ったところ、和裁業界の中でも栗田糸店の名前が広く知れ渡り、推薦してもらえるようになった。

■手芸用品への転換

1947(昭和22)年、金亀糸業株式会社に名称を変更。金亀の名は、創業者栗田直太郎の出身地である滋賀県彦根にある彦根城、別名金亀(こんき)城に由来する。その後、一般家庭へのミシン普及などに合わせ、商品の中心は和裁用縫糸からパッチワークキルトなど手芸用の糸や生地などに移っていった。

2.輸入で活路を切り開く

/chuo/img/kinkame_02.jpg 金亀糸業で取り扱う手芸用糸

■石油製品の台頭

昭和40年代、石油製品が多く日本に流通するようになる。糸や布の業界でもその影響は大きく、ポリエステルやレーヨン、ナイロンなどが市場に出回るようになった。一方で、金亀糸業は綿や絹製品に重きを置いていたため、石油製品の波に乗り遅れ、事業の立て直しを迫られた。

■アート需要に勝機あり

そんな中、英国から糸を輸入する機会があり、提携の小売店で販売したところ、予想外に反応があったことを知る。購入客の追跡調査を実施すると、パッチワークキルトといった、日用品というよりは美術・趣味を目的にした購入者が多いことが分かった。和服からアートに需要は変化するのではないかと考え、手芸用品中心の方針に舵を切った。

■キルトの流行を足掛かりに

パッチワークキルトは、その後主婦層を中心に大きな流行となり、有名デパートでもキルトの展示会に合わせ、関連商材を取り扱うようになった。金亀糸業の事業部は手芸関係の生涯学習事業部と絹製品の健康事業部に分かれているが、手芸用品は現在でも主力事業となっている。

3.発信力で市場を作る

インターナショナルキルトウィーク横浜 インターナショナルキルトウィーク横浜

■愛好者のモチベーションを高めるために

手芸用品事業が軌道に乗った後も、パッチワークキルトの業界の発展と当社のファンを増やすために、様々な仕掛けづくりをしてきた。「インターナショナルキルトウィーク横浜」や「東京国際キルトフェスティバル」などのイベントは、作品披露の場として定着しており、毎年多くの来場者がある。作品を展示する場があるということは、愛好者のモチベーションを高めることになり、市場の維持・発展につながっている。

■新たな顧客層の開拓へ

キルトを通じて生涯学習の場を提供するという観点から、栗田社長は一般社団法人日本ホビー協会の会長を務めている。協会主催で「日本ホビーショー」を開催しており、次回で39回目を迎える。最近では、親子で工作を楽しめる「ホビッ子ランド」など、若い世代に向けたイベントを打ち出している。一方で、和裁の流れを汲んだ絹製品の事業部では、巣鴨で始めた肌着やニットなど絹衣料品の小売店「絹康屋(けんこうや)」が好調に推移しており、顧客の幅が広がってきている。

4.事業継続のカギは「挑戦」と「ニーズの見極め」

本社 東日本橋にある現本社

■海外展開で新市場開拓を

石油製品の波に乗り遅れた当社を救ったのは、海外から輸入した糸だった。昭和30年代から40年代にかけて、同業者の中ではかなり早い時期に輸入を開始しており、海外への抵抗感を全く持っていないことは当社の強みと言える。主力のキルト関連商品は、人口減少により市場の縮小が予想される日本国内以外に、シンガポール・マレーシア・タイなどへの展開も考えており、日本で親しまれたキルトの文化をアジアに広げようとしている。

■糸に対するこだわり

売上に占める和裁縫糸の割合は、全体の5%未満に過ぎない。最盛期は70%以上が和裁向けだったことを考えると、和裁業界の規模縮小には著しいものがある。ただ、金亀糸業はそもそも高品質の和裁縫糸で大きくなった会社で、糸の販売をやめるという考えはない。「続ける」という字は糸を売ると書くように、糸を全く売らなくなってはいけない、との社長の信条。本業の糸にこだわり続けている。

■消費者の心を読み解く

事業を継続する上で最も難しいのは、消費者の捉え方だ。心理・行動が読めなければ、企業は取り残されてしまう。人と人とをどう結び付け、その縁からどのような商売をさせてもらうかが重要だ。創業以来の企業成長の原動力であった、消費者がどう変わっていくのかをしっかり見極め、お客様に喜んでいただくモノづくりに徹するという経営に心がけている。

(取材日:平成26年9月26日)