質素・堅実・地道の精神がつなぐ 社寺建築の伝統 | 松井建設株式会社

質素・堅実・地道の精神がつなぐ 社寺建築の伝統 | 松井建設株式会社

企業概要

企業名
松井建設株式会社
創業年
1586年(天正14年)
所在地
東京都中央区新川1-17-22
代表者名
松井隆弘(代表取締役社長)
資本金
40億円
売上高
777億円(平成25年3月期)
従業員数
704名
業種
建設業

1.戦国時代の城建築から上場企業へ

代表取締役社長の松井隆弘氏 代表取締役社長の松井隆弘氏

松井隆弘代表取締役社長にお話を伺いました

■1586年加賀藩で築城の普請に従事

松井建設は、1586年(天正14年)に初代松井角右衛門が、加賀藩の第2代藩主前田利長公の命を受け、越中守山城(富山県高岡市)の普請(※)に従事したことから誕生した。以降、伏見城の普請、富山県の瑞泉寺再建など歴史的建造物の建築を次々に手掛け、大正時代まで富山県を拠点に社寺建築に邁進してきた。 ※:建築工事

■関東大震災をきっかけに東京進出

1923年(大正12年)9月1日、関東大震災が発生する。偶然震災に遭遇した第15代松井角平は、その被害の甚大さに大きな衝撃を受け、「廃墟と化した首都を復興させることこそ建築に携わるものの使命である」と東京への進出を決意。反対する一族を説得し、東京市京橋区金六町に「松井組東京出張所」を開設。以降一般建築にも事業を拡大し、首都復興に尽力した。

■株式会社化と株式上場へ

東京進出後、築地本願寺の復興工事などで松井組の名前は広く知れることになった。1939年(昭和14年)、組織強化を目的に「株式会社松井組」(資本金13万円)を設立。戦後に入り、「松井建設株式会社」に名称を変更した。その後、1961年(昭和36年)に東証二部上場、1966年(昭和41年)には東証一部に上場。創業427年の歴史を持つ当社は、現在約2,300社にのぼる上場企業の中では最古の企業である。

2.「社寺の松井」をつなぐ、伝える

松井組(当時)の看板 松井組(当時)の看板

■社会的使命としての社寺建築

松井建設の歴史そのものとも言える社寺建築だが、戦後は、総合建設業として時代の趨勢を反映し、安定した経営基盤を確保するため一般建築9、社寺建築1の割合に比重を置き、会社の安定を図っている。しかし、創業以来手がけてきた数多くの「神社仏閣」・「城郭・文化財」等の伝統技術の伝承は当社の社会的使命と考えており、これからも積極的に取り組んでいく姿勢に変わりはない。

■伝統技術をどう守り、育てるか

東日本大震災以降、一般建築の職人が不足する中でも、社寺建築を専門とする分野では若干でも若い世代で宮大工を志す人が増えている。伝統技術を守るため、当社社寺建築技術者や宮大工の仕事が途絶えないよう常日頃考えている。そのために、社寺建築については多少採算性が悪くても当社で獲得し、技術の伝承を守り育てている。

■社寺建築の生み出す可能性

松井建設では、明治以降全国各地で2000件超の社寺仏閣、文化財の建築や改修を行ってきた。最近では、東日本大震災の津波で流出した六角堂(北茨城市)再建や、桜田門の改修工事などを手掛けている。これらの経験と実績が松井建設全体の価値を高め、顧客への信頼感となり、一般建築部門の受注にもつながっていると考えている。

3.強さの源泉は「社風」にあり

修復を手掛けた桜田門 修復を手掛けた桜田門

■「質素・堅実・地道」と「身の丈経営」

企業の成長を支えてきたのが、大正時代まで拠点としてきた富山県人の気質にも通じる「質素・堅実・地道」という社風だ。社風に基づき、社長業を受け継ぐ際に、経営理念を「社寺建築を使命とし、質素堅実な社風を維持し、環境の変化に機敏に対応しながら地道に本業に取り組む」と定めた。祖父(第15代松井角平)の提唱した「信用日本一」を社是とし、無理をしない「身の丈経営」こそが松井建設の特徴であり、負けない企業体質を作り上げる源泉になっている。

■危機を乗り越える知恵

長い歴史の中で、幾度か危機を迎えたこともある。近年では2009年頃デベロッパー企業の倒産が相次いだ際多額の不良債権を抱えてしまったが、速やかに処理を行った。短期的にはリスクもある決断であったが、将来に負の遺産を残さない事を最優先とした。以降、案件の事前審査体制を強化し選別受注を図るとともに、得意分野を徹底的に掘り下げることに注力した。老舗として長期的な視点で物事を見る経験を積んでいたことが幸いし翌年には赤字から脱却できた。

■創業最古の上場企業として

上場企業の会社の代表は最終的に株主が決めるという点は、非上場の企業とは異なる面もある。ただ、最も大切なのは松井建設という企業の存続であり、それは他の企業と変わらない。企業経営を永く続けていく上で重要なのは、まずは建設業の基本である品質・安全・環境を第一に考え、創業以来培われてきた「質素・堅実・地道」の社風を維持し、社員の育成やCSR(企業の社会的責任)活動に取り組み、「お客様に選ばれる対応」や「長期的視野」の基軸を守り続けることだと考えている。

4.老舗の品格を持った企業に

松井建設本社 松井建設本社

■時代の変化に対応する

9月から、現在使用していない九州の機材保管施設を活用し、太陽光発電事業を開始した。資源の少ない日本では役立つ事業であり、引き合いも各地から出てきている。
建設業界を取り巻く環境は東日本大震災以降大きく変化している。これまでの慣習にとらわれず環境の変化に応じてしなやかに対応し、自社の持つ資源を最大限に活用して、経営の安定と本業強化につながる新規事業を手掛けていくことも事業継続につながると考えている。

■企業の老化と戦う

老舗企業にはデメリットもある。長い歴史が安心感を生み、従業員の危機意識が希薄になったり、内向き思考や前例主義に陥りやすくなったりする。「企業の老化」とも言える弊害を打破するために力を入れているのが社員の教育・育成である。階層別に「考える」ことをテーマにした研修を本部主導で実施しているほか、「お客様から選ばれる運動(OEプロジェクト)」と称して、挨拶や言葉遣いなど毎月異なるテーマを設定して企業人としての意識改革を行っている。

■経営者として目指すもの

人口減少が予測される日本で、今後の市場規模は縮小均衡が見込まれる。その中でお客様から選ばれる会社であるためには、社風を維持し、品質・環境・安全を第一に企業市民としての社会的責任を果たしていかなければならない。また、老舗企業としても、会社の品格・思考・理念なども含めて、「さすが歴史ある会社は違う」と言っていただけるような会社づくりを目指したい。

(取材日:平成25年8月21日)