2002年4月15日
日豪経済関係強化のための産業界からの提言
日豪経済委員会
提言:我々は、日豪両国が今日まで相互の補完関係をベースに良好かつ安定的な関係を構築してきたことを高く評価しつつ、両国経済関係がさらに強化されることを希望する。今後、両国の経済関係は、既存の良好な関係を維持・発展させるとともに、両国の将来の発展に寄与する新しい分野での交流の推進や両国関係を多面的に深化させることが重要である。
こうした観点から、我々は、両国政府に対し、自由貿易協定(FTA)を含め、包括的な経済連携協定を締結することについて、早急に検討を開始するよう要望する。
1.スタディ・グループにおける検討
我々は、2001年10月に東京にて開催された第39回日豪経済合同委員会会議における合意を受け、日豪間の経済関係を強化する方策を検討すべく日豪経済委員会内に日本側スタディ・グループを組成、数次にわたる会合を開催し、提言の取りまとめ作業を行った。
2.日豪関係の現状と将来認識
政治的・経済的に安定している先進国である豪州は、将来とも対日資源供給の重要な拠点であり、透明性と信頼性の高い同国との良好な経済関係を、引き続き安定的に維持・発展させることが我が国経済の今後の発展にとって不可欠である。
既存の良好な関係の維持・発展のみならず、豪州の先進的な技術やシステムに着目し、未来型の産業創出をはかるなど両国の将来の発展に寄与する新しい分野での交流の推進が重要である。また、モノ・サービス等の取引拡大や日豪産業間の協力関係を深化させるための制度の整備、さらには人のより自由な移動など多面的な協力関係の構築に取組むべきである。
モノ・サービスの取引の活発化に加え、例えば次のような項目について日豪間で協力関係を構築していくことが重要である。
まず、電気製品の安全性基準などの製品分野の相互承認を行うことや、貿易取引文書の電子的処理を推進することができれば、円滑な貿易の促進に役立つであろう。また、バイオテクノロジー、IT、ナノテクノロジー、環境技術などの分野における科学技術交流は、未来型の産業創出の核として、日豪両国の経済発展に貢献をもたらすであろう。さらに、知的財産権保護のための協力や紛争解決メカニズム構築のための協力は、グローバル化した世界経済におけるセーフティネットとして、早急な検討が必要である。その他、大学を中心とした人材交流や中小ベンチャー企業間の協力が、日豪間の往来をさらに活発化し日豪経済関係をより一層強化させるために不可欠である。
このため、我々は、豪州との間で、2002年1月にシンガポールとの間で調印された「日星新時代経済連携協定」をベースに包括的な経済連携関係を構築すべきであると考える。
日豪間の包括的な経済連携協定は、二国間経済関係の強化にとどまらず、アジア太平洋地域の安定と経済発展に資すると確信する。
3.包括的な経済連携協定の締結を目指す
我々は、豪州側にFTAを含む包括的な協定を締結することが望ましいとの要望があることを認識していると同時に、両国間でFTAを含めた経済連携協定を締結するにあたり、WTOとの整合性を確保するためには、農業・漁業、非鉄などの分野で克服しなければならない困難な要素があることを認識している。
それにも拘わらず、将来に向けた両国経済関係発展の視点に立って、相互の充分な対話を重ねることにより、現実的な合意の道が開かれるものと信じる。従って、我々は、日豪両国政府に対し、包括的な経済連携協定の締結を目指すべく、早急に検討を開始するよう要望する。
まずは、包括的経済連携協定の全体像を設計し、比較的容易に取組みが可能な分野から協議を開始することを提案する。
以上