クオール株式会社
クオール ロゴ
所在地 | 東京都港区虎ノ門4-3-1 城山トラストタワー37階 |
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URL | http://www.qol-net.co.jp/ |
代表取締役 | 中村 敬 氏 |
上席執行役員 東日本支社 関東第一薬局事業本部 本部長 | 柄澤 忍 氏 |
コーポレートコミュニケーション部 課長 | 今井 亜希子 氏 |
設立 | 1992年10月 |
資本金 | 28億2,855万円 |
従業員数(非正規雇用除く) | (連結)3,778名、(単体)2,499名 |
代表取締役社長 中村 敬 氏
コンビニエンスストアや大型家電量販店、鉄道会社など異業種と連携し、街ナカ・駅チカ・駅ナカでの調剤薬局の開設を推し進める話題の企業、クオール。同社は、初代代表取締役社長の中村勝氏(現:会長)によって1992年に設立され、以降調剤事業と製薬会社向けBPO(ビジネスプロセスの外注化)受託事業を両輪に事業を展開してきた。2016年6月には副社長であった中村敬氏が社長に昇格。現在では約3,700人の従業員を抱え、日本全国に8事業所、調剤事業では全国に約700もの調剤薬局を設置、BPO受託事業では研究開発から販売までを広範にサポートしている。今回は同社のCSR活動について迫っていく。
「社会保障費の一部を収益の源泉とする会社として、経済的価値の追求だけでなく、社会的価値の還元も大切な使命である」、創業者である中村勝氏のこの考えの下、同社は積極的にCSR活動に取り組んできた。店舗周辺の美化清掃や資源リサイクル運動、地域の災害対策への取り組みもさることながら、従業員に薬剤師などの医療従事者が多いという利点を活かして、特に医療関連のテーマを中心にCSR活動を展開している。
小学生向け体験型経済教育プログラム「スチューデント・シティ」に参画し、小学生を対象に職業体験を実施。模擬薬局での患者への接し方や薬の扱い等についての体験を通じて、子供たちに薬局の基礎的な業務を知ってもらうとともに、職業について考えてもらう機会としているほか、全国各地の小・中・高等学校で薬物乱用防止教室を開催し、児童学生に対して、薬物の危険性について啓発を行っている。さらに、難病の子どもたちの夢を実現するための募金活動やボランティアの提供など同社の活動は多岐にわたる。
今回取材させて頂いた 柄澤 忍 上席執行役員(写真左)と今井 亜希子 課長(写真右)
こうした数々のCSR活動を行いつつ、産休や育休、育児のための時短勤務など様々な福利厚生を整えてきた同社であるが、近年、女性従業員比率が約75%に達する中で、活躍するための環境が本当に十分なのか、という問題が浮上してきた。
この問題意識の背景には、2016年4月の診療報酬改定に伴う「かかりつけ薬剤師制度」のスタートがあった。これまで多くの患者は、医療機関にかかった後、その医療機関の最寄りの薬局から薬を処方され、さらに自分で市販の医薬品やサプリメントを服用するなど、服薬情報が一元的に管理されておらず、薬の重複や飲み合わせの副作用が問題視されていた。この問題を解決するため本制度が導入され、どの医療機関に受診しても、薬の処方は身近な薬局の薬剤師を患者本人が選択する形でかかりつけ薬剤師が行い、担当の薬剤師が処方薬のみならず、市販薬、サプリメントに至るまで患者個人の服薬情報を一元的に管理できることとなった。
L.A.D.Y.S会議の風景
L.A.D.Y.S会議とは、次の頭文字をとったもので、女性の活動的な行動を応援する、輝く会議という意味。
L lady
A activity
D drive
Y yell
S shine
現場の意見を吸い上げ、今一度女性活躍のフィールドや可能性を見直すため、2016年5月にL.A.D.Y.S会議が発足した。女性従業員がかかりつけ薬剤師などとしてこれまで以上に定着・活躍すると同時に、患者や地域の女性たちへ今まで以上に高いサービスを提供していくことが目的だ。
同会議の特色は、徹底した現場からの意見の吸い上げとトップの参画の2点である。現場から広く意見を収集するため、同社の女性従業員全員と男性管理職に対し、女性のキャリアアップに関するアンケートを行ったほか、全国の8事業所を繋ぎ、テレビ会議を実施している。加えて、部署横断的な分科会を設け、コアメンバーの他、必要に応じて他の従業員も参加できる体制を整えた。
また、女性活躍は経営トップのコミットメントの下での全社体制による取り組みであることを従業員に分かりやすく示すため、L.A.D.Y.S会議の立ち上げにあたっては、代表取締役社長の中村敬氏のメッセージとして呼びかけが行われ、会議には専務取締役や上席執行役員である柄澤氏が参加している。
同会議によって進められている事業の1つが「子育てアドバイザー」の設置である。第一子でかつ0歳児を持つ従業員には、子育て経験者の先輩アドバイザーを付ける。実験的に現在は神奈川県のみで実施しているが、0歳児の母親である従業員本人はもちろん、先輩アドバイザーにとってもやりがいが感じられ大変好評とのことで、今後は全国への拡大を予定している。
また、地域の薬局が病院などと連携し、小さな子どもを持つ親を対象に、毎月20~30人の規模で「子育て大学」を実施。同社の従業員が、子どもが罹りやすい病気・アレルギーや薬の服用方法などについて教えている。
子育て大学講義中はスタッフでベビーシッターも行う
子育て大学講師 医療法人社団ナイズ キャップスクリニック 白岡理事長
現場目線での、身近な改善活動もある。時短勤務等の際に取得する本人が申し訳なさを感じる場合も多いとの意見が従業員から多く寄せられたが、会議の意見交換では、自身も働きながら2人の子供を育てた柄澤氏の経験から、「プラス1の仕事」という取り組みが紹介された。例えば、本来の薬剤師の業務に加え、薬をストックする棚を拭くなど、職場の皆が気持ちよく働けるためのちょっとした気遣いを続けていくことで、職場の上司・同僚とのコミュニケーションが大変良くなったというものである。
このように様々な活動に取り組む同会議であるが、進めていく上で気を付けていることも多いという。その1つは、女性管理職比率を50%とする中長期的な会社の方針を明確に掲げつつも、特に達成期日を区切っていないことである。その理由としては、企業として管理職を育てることにはある程度時間がかかることや、男性管理職向けアンケート結果から、ほとんどの男性管理職が女性活躍の推進に理解を示してはいるものの、「期日を守るために公平な管理職選考が行われないのではないか」という男性側の潜在的な不安にも配慮したことがある。
2つ目が取り組み状況や成果の周知を含めた社内のコミュニケーションである。同社では、従業員が働く現場が全国各地に分散していることから、社内コミュニケーションにTV会議システムや社内イントラネットを活用している。取り組み状況や成果を常に社内に共有していくことで、取り組みの必要性や会議の存在意義を従業員に理解してもらい、より社内を巻き込んでいくことができると考えている。社内イントラネットにL.A.D.Y.S会議の専用サイトを作成し、同会議の取り組みや成果について見やすくまとめた情報を近日中に公表する予定である。相談フォームも設けることで、全国から様々な意見を集め、今後の活動に反映させていくそうだ。