PROJECT STORY

プロジェクトストーリー

東商リレーションプログラム

東商リレーションプログラムとは

「中小企業の魅力発信」と「大学初年次からの職業観の醸成」を目的として、「会社を知る」「仕事を知る」をテーマに、学生が企業に足を運び、経営者や従業員と接することで視野を広げ、卒業後の進路の参考にしてもらうことを目的としたプロジェクト。年2回行っており、受入可能な会員企業を募集し、大学(東商会員)のキャリアセンター等を通じて、参加学生を募っている。目的は、東京商工会議所が橋渡しとなり、中小企業と大学、学生をつなげるところにある。

プロジェクトの概要

対象:大学1・2年生 時期:年2回(2・3月・8・9月) ※学生の休暇期間を中心に実施

会社
ツアー

1〜3時間
会社のフロアをめぐることや課題解決型のワークショップなどを行うことで、その業種特性や会社そのものを理解する。

仕事
観察

4〜8時間
1人の職業人に、半日程度ついて回ることで、その仕事をリアルに理解する。

東商リレーションプログラム

これまでの実施状況

第1回(2015年8-10月)
9社 /大学5校・学生63名
第2回(2016年 2-3月)
18社 /大学8校・学生94名(のべ160名)
第3回(2016年 8-9月)
27社 /大学10校・学生221名(のべ286名)
第4回(2017年 2-3月)
予定

プロジェクト担当部署

人材・能力開発部
人材支援センター

登場職員

※所属は取材当時のもの

  • 所長 蔵方 康太郎 所長 蔵方 康太郎 くらかた こうたろう
  • 主査 野田 豊樹 主査 野田 豊樹 のだ とよき
  • 職員 稲葉 七海 職員 稲葉 七海 いなば ななみ

1 プロジェクト開始のきっかけ

始まりは委員会の場だった

「学生に中小企業の魅力を発信できる仕組みを作ろう」

そのような意見が出たのは、2014年夏に行われた「若者・産業人材育成委員会」だった。

東京商工会議所(以下、東商)の調査では、職場体験などを行っている中小企業は7.6%に止まる(大企業は45.2%が実施)。東商の会員企業のほとんどは中小企業だが、人手不足や学生の応募に結びつかないなど、職場体験を実施していない、あるいはできない理由が調査から明らかになっていた。学生は中小企業の魅力を知らないまま就職活動をしていることも多く、入社後のミスマッチにも繋がっている。また、大学からも学生に対して「多くの企業に目を向けて欲しい」という要望もある。

そのような状況の中で、会員企業の声に応える東商の存在が重要となる。中小企業の人材不足という課題がある中で、東商ならではのネットワークを活かし、中小企業・大学・学生にとってより良い仕組みを作ることが、責務だった。

会員企業の人材採用支援を所管している人材支援センターの蔵方所長は、こう語った。

「大学生の本分は勉学ですが、一方で、大学3年生になって急に頭を切り替えて就職を意識すると、どうしても業界研究が十分でない事も多く、イメージが先行してしまうこともあります。そこで、大学1年生の時から少しずつでも『働くとはどういうことか』ということを意識してもらうことで、自分にふさわしい仕事とは何なのかを考え、学生の将来に向けて、多様な選択肢と希望を持ってもらうことが大事なのではないかと考えました。また、会員企業の中には中小企業が多いので、中小企業ならではの仕事の魅力を知ってもらうことも必要ではないかと思っています」

こうして中小企業と学生、また、多くの大学も会員企業になっていることから、それぞれの想いを汲み取る仕組みが必要と考え、「東商リレーションプログラム」という名称でプロジェクトがスタートすることとなった。

課題の図

2 実際の業務の流れ

企業と大学を訪ねて

一つの事業が始まると、東商の職員は事務局の役割を担う。主担当が上司や他の職員の協力を得ながら、円滑な運営を目指す。本プログラムは、若者・産業人材育成委員会の委員との打ち合わせ、参加企業や大学のリスト作成、企業内のプログラム構築サポート、学生が訪問前により学びを深めるための事前研修会の運営など、多岐にわたる。まずは、企業と大学を訪問し、事業をご理解いただくことから始まる。

「これまでのべ60ヵ所以上を訪問し、何度も打ち合わせを重ねました。第1回は企業9社と大学5校のうち、委員企業にもご協力いただきました。回数を重ねるごとに事業を理解いただき、企業と大学の拡大にも繋がりました。中小企業と大学がお互いにメリットがあると実感いただいています」

東商の事業に納得いただけることが、職員としてやりがいを感じるときでもある。企業と大学が決定した後は、プログラムの構築サポートに取り組む。内容は企業に決めていただくため、他社の事例も紹介しながら打ち合わせを行う。決定した内容を大学に案内し、ようやく学生の募集が始まる。学生の情報をいただくにあたっては、個人情報の覚書を取り交わすことも重要な業務である。

「何人の学生が応募いただけるのか、毎回緊張します。多くの企業を学生には見ていただきたいと思います。大学にはポスターの掲示やメールだけではなく、新入生ガイダンスやキャリア系の授業内でも告知いただくようお願いしています」

参加する学生が決まった後は、会議室やレイアウトの決定、備品や進行表の作成など、事前研修会の準備を行う。

「主役である学生が、いかに学びを深める場を作ることができるかを考えます」

また、事前研修会は企業と大学担当者にも出席をお願いし、学生のありのままの姿を見ていただく。企業訪問前の顔合わせの機会にもなり、お互いに準備ができる。学生は企業ごとに構成されたグループ内にて、参加して学びたいことや質問事項など、事前に記入したワークシートの内容を全体で共有し、企業からフィードバックを受ける。

  • 学生を前に挨拶する若者・産業人材育成委員会前田委員長(当時)学生を前に挨拶する若者・産業人材育成委員会前田委員長(当時)
  • 討議した内容を発表討議した内容を発表
  • グループワークにて意見を出し合うグループワークにて意見を出し合う
  • ファシリテーターの若者・産業人材育成委員会深澤学識委員ファシリテーターの若者・産業人材育成委員会深澤学識委員

「自ら手を挙げて応募した学生はモチベーションが高く、企業担当者と積極的にコミュニケーションを図っています。しっかりと意見を持っており、私も刺激を受けました」

企業と学生の体制が整った。この後はいよいよ学生が企業を訪問する。企業には必ず1人は東商職員が随行する。

プログラム当日に、困ったことが発生した。残念ながら無断欠席者が出た。大学とは連絡体制を敷いているが、徹底しきれないところもある。そこで、2回目以降は事前研修会の場などを通じて、「企業は貴重な時間を使って学生の皆さんを受け入れている」ことを、直接伝えた。

「『学生も気軽な気持ちで参加するのではなく、何かを得て帰って欲しい』という気持ちを込めました。結果的に回数を重ねるごとに無断欠席者は減っていきました。企業担当者や学生から、参加して良かったと言っていただけることが一番のやりがいです」

野田主査は、笑顔でそう語った。

企業訪問を終えた後は、各社に実施状況のヒアリングや学生から事後課題(ワークシートに感想などを記入)を回収して企業に届けるなど、総仕上げを行う。

「本来は事後研修会など、活動をアウトプットする機会を設けることでさらに学びが深まるのですが、学生の休暇期間終了直前まで、企業には訪問の協力をいただいていることから、事後学習は各大学のキャリアセンターなどにお願いしています。面談に加えて、大学によっては授業の中で、先輩の体験談を後輩に語るプログラムを設けるなど、参加者数の拡大に繋がっています。主体的に行動する学生が増えています」

企業と大学、学生の満足度をさらに高めるために、課題を洗い出して事業は一区切り。次なる準備が始まる。

  • 社内ギャラリーを見学社内ギャラリーを見学
  • 人事担当者から会社概要の説明を受ける人事担当者から会社概要の説明を受ける
  • 社員との懇談会社員との懇談会
  • 研究所を見学研究所を見学

実際のプログラムの流れ(例)

プログラム 時期 内容

会社ツアー編

4月上旬~6月上旬
企業・大学の募集、ヒアリング
5月下旬~6月下旬
企業・大学の決定、プログラム構築
6月下旬~8月上旬
大学への案内、機密保持契約・保険関係の確認
7月上旬~8月下旬
学生の募集・決定、受入体制の確認
7月下旬
プレスリリース(東商リレーションプログラム)
8月中旬
プレスリリース(事前研修会)
8月下旬
事前研修会
9月上旬~10月上旬
プログラムの実施
9月上旬~10月中旬
実施状況のヒアリング、ワークシート(事後課題)の回収

3 東商リレーションプログラムの魅力について

大学1年生と企業に接点を作る

中小企業・大学・学生をつなぐ新しい試みである東商リレーションプログラムだが、その魅力を改めて野田主査と同じくプログラムを担当する稲葉職員はこう語る。

「学生側から見れば、大学1年生から何らかの職業に関わることは、とても良い機会ですよね。こうしたプログラムは今までありそうでなかったように思います。参加した学生もプログラム当日は緊張している様子でしたが、グループワークを行う中で、社員と話すうちに、少しずつ打ち解けていく様子が印象的でした。また、中小企業の行っていることを具体的に知ることができ、自分の将来についてもっと考えるようになったという声もあり、いろいろ得るものがあったようです」

稲葉職員は2016年に入所したばかりの新入職員だ。だからこそ学生に近い目線でプログラムを見ることができる。東商では1年目の職員でもできることは数多くあり、むしろ積極的に関わることができる環境があると話している。

「正直、まだまだ仕事はこれから覚えていくことばかりです。成長して自分でうまく仕事を回せるようになるまではもっと時間がかかるなと思います。たまに自分が先輩のように仕事ができるようになるのかなと不安になることもありますが、誰のために働いているかを考えると、参加いただいている企業様や、学生さんたちの顔が浮かびます。この人たちのために私は働いているという実感ができて、目の前の仕事に集中できますね」

東商の仕事には東京23区というフィールドがある。ただ机に座って黙々と仕事をしていると忘れがちになってしまうが、現場を見て、足を運ぶことによって、誰のために働いているのかを実感できるのだ。

プログラムの発案は若者・産業人材育成委員会だが、実際にプログラムを裏方として支えていくのは、事務局である人材支援センターだ。そこに担当職員として関わる以上、慎重に効率良く業務を遂行しなければならないプレッシャーももちろんある。しかし、そこには充実感や達成感もあると稲葉職員は語った。

4 これからの東商リレーションプログラムに向けて

長いスパンで学生の職業観を醸成し、理想の働き方が選択できること

  • 所長 蔵方 康太郎
  • 主査 野田 豊樹
  • 職員 稲葉 七海

「まだプログラムとしては始まったばかりで課題もありますが、このプログラムを受けてくれた学生の方々が、自分の将来に希望と自信が持てる働き方を見つけることができるのであれば、担当者として、とても嬉しいです」

稲葉職員は言う。学生を受け入れた企業側からすれば、特に若い人材の不足を解消するため、プログラムに参加した学生が入社してもらえれば非常に嬉しいことであろう。しかし、参加した大学1年生が就職活動を始めるのは、少なくとも3年後の話である。2年目に入った本プログラムにおいて、「中小企業の人材不足解消」という真の成果が問われるのは、まさにこれからなのだ。

そして、今後の取り組みとして、できることは多くある。プログラム自体の周知活動もその1つだ。新しく参加していただける企業や大学を開拓していくことも必要となる。大学側にしっかりと情報を周知して、学生の募集をお願いすることなども継続して依頼していかなければならない。

会員企業・大学の抱える課題を解決していく仕組みづくりをしていくことが、東商職員の使命であり、その仕事の醍醐味にもつながっている。これからもこのプログラムを通して、中小企業支援のために人材支援センターの職員たちは働いている。