会頭コメント

会頭コメント

平成21年岡村会頭年頭所感(東商新聞掲載)企業の力を未来へむすぶ~東京から元気を発信し、日本経済をけん引するために~

平成21年1月1日
東京商工会議所
会頭 稲葉興作

平成21年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

スピーディな経済対策を

 おめでたい一年のはじまりの話題としてはふさわしくありませんが、昨年は100年に一度とさえいわれる世界的な金融危機により、世界経済は一瞬にして激変しました。この動きが外需に依存してきた日本経済を直撃し、急激な輸出の減少、個人消費の低迷など景気後退に直面しております。
  地域経済や中小企業は、昨年の原油・原材料価格の高騰の影響から脱却できないままに深刻な消費低迷に追い打ちをかけられ、経済の閉塞感、企業の資金繰りへの不安は一気に高まりました。
  このような状況が続けば、懸命に経営努力を続けている意欲ある中小企業を存続の危機に追い込むことになりかねないと大変危惧しております。日本経済の主役と言える中小企業を追い込むことは、日本国家の基礎力そのものを削ぎ取ることになりかねません。
  いま日本の最優先課題は、一日も早い景気回復を図ることです。雇用の安定化と内需拡大、そして中小企業の経営安定化に向けて、政府そして与野党の国会議員、東京都議会議員の皆様には、国民の目線で経済・金融・税制などあらゆる手段を総動員し、スピード感を持って思い切った政策を断行していただくことを切に期待するしだいです。

企業の力を未来へむすぶ
 一方、日本社会は今、IT化や価値観の多様化など企業経営にかかわる環境変化のみならず、少子高齢化の進展や地球規模での温暖化の加速など、世界的に刻々と変貌を遂げる社会情勢の動向にも的確に対処していくことが求められております。
  希望と明るさに満ちた未来を創造していくためには、企業や事業者の方方が環境の変化に対応し、持てる強みを存分に発揮していただき、企業活動や生活の拠点である首都・東京の都市力を相乗的に高めていくことが必須であります。
  東京商工会議所は昨年12月、中長期ビジョン「企業の力を未来へむすぶ」をまとめました。東京という都市を拠点に活動する私どもが共に手を携え、絶え間ないイノベーションを巻き起こし、活力あふれる企業活動を推し進めることにより、東京から全国に元気の輪を広げ、日本経済をけん引し、ひいては東京やわが国の国際的プレゼンスを高めていくための標となるものであります。中長期ビジョン実現への取り組みを通じ、東京の地域総合経済団体として、「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「わが国経済社会の発展」という3つのミッションを果たしてまいります。

なくてはならない商工会議所
 渋沢栄一初代会頭による創設から130年。その歴史の中で連綿と培われてきた強みをしっかりと継承しつつ、東京商工会議所自らが率先して行動し、変革に挑戦していかなければなりません。より一層、現場に立脚した視点を重視し、企業や地域が抱える課題解決のための手立てを、タイムリーかつ強力に講じることにより、より高い成果と貢献を果たしてまいります。ビジョンを絵に描いた餅に終わらせないためには、PDCA(Plan-Do-Check-Action)サイクルにより、着実に実行し検証していくことが重要です。
  東商ではそのために中期ビジョンのアクションプランとして、これからの5年間「中堅・中小企業の活性化と経営革新」「世界都市・東京の実現」「持続可能な経済社会システムの構築」の3つを重点課題として取り組みます。
  「中堅・中小企業の活性化と経営革新」に向けて、中小企業経営の基盤強化、新たな都市型産業・ビジネスの創造、IT活用による生産性向上の支援、知的財産の創造・保護活用の推進、女性・高齢者・外国人の活用による人材確保支援、グローバル化への対応支援に取り組みます。
  「世界都市・東京の実現」に向けて、世界主要都市レベルの社会資本整備の推進、海外から多くの人が訪れる都市の魅力づくり、安全・安心な都市づくりの推進、道州制のもと23区を一体とする「東京市」構想の研究を行います。
  「持続可能な経済社会システムの構築」のためには、低炭素・循環型社会、教育再生と産業人材育成、持続的な成長に資する税制、持続可能な社会保障制度などの実現に向けた取り組みを推進します。

 以上、年頭にあたり所懐の一端を申し述べました。「10年後の東京の姿」を見据えて、アクションプランに取り組むスタートの年となる本年。守るべき理念は堅持しながら、さまざまな分野でのイノベーションの推進に向けて、活動の主役である会員の方々はじめ、企業や地域、広く社会にとって「なくてはならない商工会議所」をめざして邁進しなければなりません。会員の皆様には、一層のご理解とご協力を心からお願い申し上げます。