会頭コメント

平成29年三村会頭年頭挨拶(東商新聞掲載) ~創立140周年に向けて新たな挑戦~

平成29年1月1日
東京商工会議所

明けましておめでとうございます
平成29年の新春を迎え、謹んでお慶び申しあげます

 昨年11月の東京商工会議所議員総会および日本商工会議所臨時会員総会にて、皆さまのご推挙をいただき、東京商工会議所・日本商工会議所の会頭に再任され、会頭として4回目の新年を迎えました。改めて、商工会議所の使命である、企業の繁栄、地域の再生、日本の成長の同時実現に向けて、全力で取り組んでまいります。

■まず民が積極的な事業活動を
 昨年は、世界で様々な政治的サプライズが発生しました。地政学混乱に余剰マネーの動きが加わり、世界情勢は振幅の大きい不安定な動きを繰り返しました。株式・為替市場の振幅により、企業家心理と家計は将来に対し、より保守的になりました。
 本年はさらに、トランプ新政権の政策などが不安定を助長させる可能性もありますが、わが国には、世界に誇る安定政権がありますので、いたずらに動揺することなく、じっくりと直面する課題に取り組むべきです。
 わが国の最大の課題は、足元で0.2%台まで下がってしまった潜在成長率を引き上げることです。「人手不足」と「生産性向上の停滞」が潜在成長率を引き上げるボトルネックとなっていますので、各種構造改革、生産性の向上、働き方改革など、サプライサイド政策に力を入れて取り組むことが必要です。
 サプライサイド政策の特徴は、政策の打ち出しから成果が出るまで時間を要するということです。民間は、不安定な世界の中でもリスクテイクしながら積極的に行動することにより、サプライサイド政策の成果を出す重要な役割を担っていますので、まずは民が動き出すことが必要です。
 また、規制改革等の構造改革は、国全体の効率化・生産性向上を図る政策であり、一部の人には痛みを伴うことから、利害の調整という政治本来の役割が必要となります。
 従いまして、サプライサイド政策を中心に据えたアベノミクスの成果を挙げるためには、政府も民間も、時間と粘り強い取り組みが必要であることを自覚し、民が積極的な事業活動に力を入れ、安定政権がそれを後押しすることが必要です。
 こうした中、商工会議所として重点的に取り組むべき課題は、「中小企業の成長の底上げ」と「地方創生の実現」です。

■「人手不足への対応」と「後継者の確保」
 中小企業が直面している最大の課題が、「人手不足への対応」です。
 深刻化する人手不足に対して、女性や高齢者など多様な人材の活躍を推進していくことが必要です。中小企業は、女性の活躍推進、柔軟な働き方の導入、高齢者の積極的な雇用など「働き方改革」をいち早く実践していますが、こうした取り組みを加速していかなければなりません。
 そして、人手不足を解決するもう一つの方策は、「生産性向上」です。
 中小企業の生産性は、平均で大企業の2分の1にとどまっていますが、中には大企業の生産性の水準を上回っている中小企業も多くあり、そうした企業に共通するのは、経営者の成長への意識が高く、ITや設備投資などに積極的であるという点です。ここに生産性向上の鍵があると考えます。
 デジタル技術は、今後、等比級数的に進歩すると思われます。またクラウド化、パッケージ化によって、より安く使い やすいものになると予想されます。
 しかしながら、中小企業のデジタル技術の取り組みは、まだわずかにとどまっています。経営者の気付きを促し、ICTを超えて、デジタル技術やAIの導入、ロボットの活用などにより、工場の生産現場やサービス分野の生産性の向上を図っていくことが必要です。
 我々は、人手不足を嘆いてばかりいる必要はありません。
 人手不足は、逆説的に、構造改革の中でも最も難しいと言われている「働き方改革」を加速するとともに、若者と女性の活躍する場を拡大し、さらには、IoT、AI、ICT技術導入の大きなインセンティブにもなるポジティブな面もあると言えるからです。
 中小企業が直面するもう一つの課題は、「後継者の確保」であります。
 商工会議所として、事業承継の支援を積極的に推進するとともに、事業承継の大きなハードルとなっている「事業承継税制の見直し」についても、提言を続けてまいります。

■地域の資源や強みを活用した成長産業の育成
 わが国の付加価値額の約半分は、三大都市圏以外の地方で生み出されており、「地方創生の実現」は、潜在成長率の引上げと持続的な経済成長に不可欠であります。また、東日本大震災や熊本地震の本格復興、福島再生の早期実現なしに日本経済の再生はあり得ません。
 私は、地方創生の実現に向けて、広域観光振興や農商工連携など、地域の資源や強みを最大限に活用した成長産業を育成し、域外の需要、消費、投資を取り込むことの重要性を繰り返し申し上げてまいりました。さらに、地域で産んだキャッシュは、地域で消費する循環を創出することが重要だと思います。
 観光産業は、担い手の大半が中小企業であるとともに、自動車産業に次ぐ消費規模を持つ一大産業です。
 現在、全ての商工会議所に観光担当者が設置され、ネットワークを活かした観光商品の開発が進んでいます。未だ見落としている地域の自然や伝統文化などを掘り起こして磨き上げ、ストーリーをつけて売り出し、地域を挙げておもてなしをする持続的な取り組みを、一層加速していくことが必要であると思います。
 また、2020年オリンピック・パラリンピックに向けて、地方と都市の広域連携により、国全体のバランスのとれた成長に繋げていくため、各地域において、国際交流、ビジネスチャンスの拡大、観光振興等に積極的に取り組んでいただきたいと思います。
 農林水産業も長い年月をかけて育てられた貴重な地域資源です。大規模化やコスト削減など、競争力強化に向けた農業改革が進み、また、2020年に輸出額1兆円を目指した政府目標が前倒しで達成される見込みとなるなど、海外を含め更なる市場の拡大が期待できる成長産業であります。
 商工会議所と農林水産業団体との連携によって付加価値の高い商品を開発し、海外も視野に入れ、広く販路を広げていくことが重要です。
 さらに、地方の中小企業には、高い技術力と競争力を持ち、世界マーケットを狙えるものづくり企業が数多くあり、これも地域の重要な財産です。
 こうした地方創生の取り組みを支え、加速するのが、物流・人流の円滑化を促す社会資本整備であります。とりわけ、地方創生にとって効果が大きい整備新幹線、高規格幹線道路、大型クルーズ船に対応した港湾の整備、コンセッションを活用した空港民営化などは、観光客の増加、設備投資の促進、雇用創出などに大きく寄与するものです。
 民間投資を喚起するストック効果を重視しつつ、商工会議所としても、社会資本整備を強く要望していく所存です。

■創立140周年へ向けて新たな挑戦
 政治的な混乱はあるものの、欧米の経済は堅調です。OPEC・非OPEC諸国の合意により原油の減産が決まり、原油価格も適正な価格に向け上昇し始めています。わが国もまだ大企業の動きではありますが、景況感が好転しつつあります。
 これは私の仮説ですが、トランプ新政権の経済政策に関して、今後2年程度に限定すれば、マイナス影響よりもプラス影響の方が上回り、米国の成長率は上方に上向くと期待されます。
 この2年間は、日本がサプライサイド政策を遂行するのに必要な時間的猶予を与えられたとも解釈でき、企業も政府も構造改革を積極的に進めることに活用するべきです。構造改革はフォローの風の中での方が進めやすいからであります。
 世界でも屈指の安定政権に恵まれた日本に対し、諸外国の期待はむしろ大きく増大していると前向きにとらえ、民間企業も、チャンスを見逃さず、果敢に事業に取り組んでいかなければなりません。
 私達は、マーケットの短期的な動きに一喜一憂することなく、構造改革とイノベーションを着実に深化させていかなければなりません。成長率引き上げには時間を要するとしても、成長に向けたトレンド変化は早急に達成すべきです。そのためには、これから2~3年が、わが国にとって勝負の年となります。
 東京商工会議所は、2018年に創立140周年を迎えます。東京商工会議所のミッションである「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「日本経済の発展」の3点の実現に向け、会員企業の皆さまと力を合わせて、次の150周年へのさらなる飛躍につながる新たな挑戦をこれからも続けて参ります。

以上

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