会頭コメント

会頭コメント

平成23年年頭所感(東商新聞掲載)

2011年1月1日
東京商工会議所

 平成23年の新春を迎え、謹んでお慶び申し上げます。

■中小企業の活力強化で真の成長実現へ 
 世界経済は先進国において回復の動きが緩慢なものの、多くの新興国では力強い回復が続いており、総じて緩やかな回復基調にあるといえます。一方、日本経済は、昨年前半に持ち直しの動きが見られたものの、足踏み状態が続いている状況です。今後、景気の持ち直しが期待されるものの、デフレの影響に加え、依然として高い為替水準など、先行きの不透明感は払しょくできていません。
 こうした中で、日本経済が自律的な景気回復を果たし、持続的な成長を実現するには、政府が策定した「新成長戦略」の具体化に官民一体でスピード感を持って取り組むことが重要です。中でも、地域経済と雇用を支える中小企業の活力強化なくして、真の成長実現はあり得ないと考えています。私は、新成長戦略実現会議などの場を通じて、中小企業を「新成長戦略」実現の中核的な担い手として位置づけ、中小企業が参画できるより多くのプロジェクトが具現されるよう、働き掛けてまいる所存であります。

■潮流変化への対応
 わが国の経済社会を取り巻く環境は、大きく変化しています。ニーズや価値観の多様化、経済のグローバル化、情報化が急速に進展しております。これからの日本経済は、単に「量」を求めるのではなく、最先端の科学技術や、「質」の高いサービスなどソフト面の充実によって、世界の中で存在感を示していく必要があります。
 同時に、こうした「潮流変化」に対して、個々の企業も新たなビジネスモデルの構築や事業領域の開拓など、自らの責任と行動をもって、的確に対応していくことが求められております。
 特に、経済のグローバル化が加速している状況では、国内市場をターゲットとする企業であっても、世界経済の影響を受け、世界を意識せざるを得ません。アジアを中心とした新興国の成長を、自らの成長にいかに取り込んでいくかという発想が、中小企業の発展に重要であると感じます。また、先進諸国に比べ、総じて低い水準にあるわが国の労働生産性は、中小企業において大企業よりも低い状況にあり、中小企業の生産性向上も、わが国の経済の底上げには不可欠であると考えます。

■東商の5つの運営方針

 私は、昨年11月に皆様にご推挙いただき、引き続き東京商工会議所会頭の任を務めさせていただくことになりました。時代の変化に対応した新しい発想を取り入れつつ、商工会議所の活動をさらに発展させることで、会員の皆様や地域活性化のお役に立ちたいと考えております。
 変化の激しい現状で、商工会議所には、多様化・専門化する政策課題の解決に向け、迅速かつ積極的に提言していくことが求められています。また「地域経済総合団体」として経営支援活動や地域振興活動を通じて、個々の企業や地域が抱える課題に対して、責任を持って対応しなければなりません。
 ここ数年、商工会議所と自治体が一体となった提言活動や、近隣商工会議所との連携による商談会を実施しているほか、支部間の連携事業も活発になっております。これからは、ビジョンや目的を共有した上での「広域連携」による取り組みを、積極的に推進すべきだと考えます。
 私は再任にあたり、「『個』が光るイノベーション・第2章」と題する所信の中で、5つの運営方針を示しました。
 第一は、「現場主義の徹底」です。23区のそれぞれの支部を含む、現場に立脚した活動こそが、東商の「原点」であり、「強み」であると確信しています。その信念のもと、政府や自治体への政策提言の際に、会員の皆様の「現場の生の声」を届けたいと考えております。「現場の生の声」だからこそ、説得力のある政策提言が可能になります。
 第二は、「多様化への対応」です。経済社会を取り巻く環境変化により価値観やニーズが多様化し、個々の企業が抱える経営課題も多様化しております。「個が光る」元気な企業が一社でも多く育つよう、商工会議所のさまざまな経営支援活動を通じて、多様化する経営課題にしっかりと対応してまいります。
 第三は、「グローバル化への対応」です。東商では今期、「中小企業国際展開推進委員会」を新たに設置し、中小企業のグローバル化に向けた具体的な支援策を検討し、実行に移します。加えて、海外の商工会議所とのネットワークをさらに活かして、最新情報の提供や国際経済交流の強化を図っていきたいと考えております。
 第四は、「生産性向上への対応」です。東商では今期、「IT推進委員会」を新たに設置し、中小企業のIT化による生産性の向上に具体的に取り組んでまいります。IT化により業務プロセス全般を見直し、抜本的な業務改革を図ることが重要です。情報が戦略的に活用されることで、生産性の向上にとどまらず、新製品や新サービスの開発、販路拡大など、付加価値の増大に繋がっていくものと考えます。
 第五は、「中長期ビジョン『企業の力を未来へむすぶ』の実現」です。東商は、「会員企業の繁栄」「首都・東京の発展」「わが国経済社会の発展」という3つのミッションを果たすため、東商がめざす10年後の東京の姿を描き、アクションプランを定めました。このアクションプランの遂行にあたり、役員、議員、支部役員、会員の皆様や事務局が中長期ビジョンを共有し、共に連携して行動していくことが大切です。特に、各支部におかれましては、地域のステークホルダーの皆様とビジョンや目的を共有し、地域の発展に向けた活動を積極的に推進していただきたいと存じます。

 本年は、昨年の役員・議員の改選を経て、新体制のもとで迎える最初の年であります。これから基本方針に沿った取り組みを鋭意進めるとともに、着実な成果の積み重ねに努めてまいる所存です。大きな潮流変化に直面している時代だからこそ、商工会議所の原点に立ち返る必要があります。「商工業者の声を集約し社会に訴える、そして企業と社会をむすぶ」という初代会頭・渋沢栄一翁の思いを堅持し、勇気を持って、守るべき理念は守り、時代に合わせて変えるべきものは変え、新しい活動を創造する「イノベーション」の促進に向けて、本部・支部一丸となって全力で邁進したいと存じます。会員の皆様には、一層のご支援、ご協力を心からお願い申し上げます。

以上