政策提言・要望

中小企業における確定拠出型年金制度について

平成11年6月30日
東京商工会議所

(はじめに)
 自民党・年金制度調査会の小委員会を中心に検討されている確定拠出型年金制度の具体的検討の方向は、昨年われわれが提言した企業年金の意見書に概ね沿うものであり、基本的に支持している。

 中小企業においても確定拠出型の年金制度については大変関心が高く、去る5月に実施した中小企業向けのアンケート調査では、具体的に導入を検討したいと回答した企業は、回答企業約400社のうち4割弱(37.8%)にのぼっている。また、「具体的な内容が決まれば話を聞いてみたい」という回答も24.9%、「他社の動向を踏まえて検討したい」という企業も22.6%あった。
 併せると、8割以上(85.3%)の中小企業が新しい制度を支持しており、導入には前向きな姿勢を見せている。

 このため、今後引き続き確定拠出型年金制度の検討を行うに当たって、中小企業への普及の観点から、以下のような点についても検討・導入されたい。

提言要望

1. 企業が拠出する場合について

(1)確定拠出型年金の加入
 小委員会の検討案では、企業の従業員はすべて制度の加入者となることとされているが、既存制度からの移行に際して労使合意があれば、事業部門毎や職種毎といった部分的な加入も可能とすべきである。現実に、希望者には退職金等を前倒して給与の一部に上乗せして支払っている企業等も増えており、従業員すべてが加入の条件となると、導入したくても導入できない企業が出てくる。差別的取り扱いをしないという前提で、部分的な従業員の加入も出来るようにすべきである。

(2)確定拠出型年金の拠出
 今後の労働者の就業意識や雇用形態の多様化等に伴い、企業年金もますます多様化していくと考えられる。確定拠出型の年金制度を創設する場合は、従来の企業年金の発想にとらわれず、従業員の拠出を前提とする企業のマッチング拠出も認めるべきである。この場合には、企業が年金規約などを作ることで指定団体を経由せずに拠出できるようにすることが必要である。

(3)年金資産のポータビリティー確保のための仕組み
 離転職した場合のポータビリティー確保の観点からは、年金資産を次の企業へ移管できるだけでは不十分である。現実には、転職した先に確定拠出型年金制度がない場合や、現在のような厳しい雇用情勢下では、すぐに次の就職先が見つからないこともあり得る。このため、次の就職先に移管できるだけでなく、給付可能となる年齢に達するまで年金資産を管理・運用し、課税を繰り延べられる機能が必要である。離転職者の資産管理については、企業が継続するのは非常に難しく負担が大きいため、原則的には指定団体が行うことが望ましい。

(4)拠出限度額
 今後、公的年金の給付水準が抑制されることを考えれば、個人の拠出限度額(所得控除額)としては、老後所得の一つの柱となるよう、相当程度(年間100万円)の規模が必要である。

(5)確定拠出型年金制度を設けるための要件
 確定拠出型年金の要件については、出来るだけ簡素にすべきである。既存の企業年金は大企業を前提とした制度設計・運用であるため、中小企業には使い勝手が悪い。新制度については、小規模な企業にも導入可能な内容とすべきであり、行政等への提出書類も最小限とし、コスト負担の少ないものでなければ、普及は難しくなるといわざるを得ない。具体的な内容を出来るだけ早く提示して欲しい。その場合、必要により企業年金法についても検討する必要があろう。

2.企業が拠出しない場合について

(1)企業が拠出しない場合の確定拠出型年金の仕組み
①従業員のうち希望者がたとえ一人であったとしても、企業として天引きが義務付けられることになる場合、企業にとっては否応無く事務負担やコストが生じる。かかる煩雑な事務を専門の経理部門を持たないことも多い中小企業に義務づけることは過大な負担であって現実味に欠ける。そもそも従業員個人の意志で拠出されるものについて企業に義務を課すことは妥当性を欠くと言わざるを得ない。このため、天引きを行うかどうかは個々の企業の判断に任せるべきである。
②この場合、自営業者については指定団体が限度額管理を行う仕組みになっていることから、企業を経由しないで個々の従業員が直接加入することも可能とすべきである。また、第3号被保険者(サラリーマンの妻)についても加入の途を開くべきであろう。
③企業の拠出がなく、従業員が直接加入する場合は、「指定団体」を経由することになっているが、従業員にはこのプロセスの分だけ追加的なコストがかかる。また、保険料の振込手数料や指定団体への手数料なども加わると考えられる。制度普及、中小企業従業員と大企業従業員との格差是正の観点からは、コストの面で負担の少ない制度であることが望ましく、最大の配慮をされたい。

(2)指定団体のあり方
 指定団体の業務については、指定団体でなければできない必要最低限のものとし、可能な限り市場原理に則って民間機関に委ねるべきである。

3. その他

 現在の確定給付型企業年金の多くは、長引く景気の低迷や低金利等の影響で大変厳しい状況にある。このため、中小企業からも既存制度からの新しい制度へ容易に移行できることについては強い希望があり、先に実施したアンケート調査でも、回答率が最も高かった(67.9%)。

 現在の確定給付型年金制度については、退職給与引当金の引当率の引き下げや退職給付における新会計基準の導入など、企業を取り巻く環境はこれからますます厳しくなり、維持し続けることがさらに難しくなっていくと考えられる。

 このままでは、中小企業においては企業年金・退職金制度を廃止する企業が増大することが懸念されるので、既存の企業年金・退職金からできるだけ円滑に移行できるような措置を検討されたい。なお、厚生年金基金については、確定拠出型年金への移行に伴い、基金部分のメリットが失われることになることから、併せて、厚生年金の代行部分の返上を可能とすべきである。

 また、現行の確定給付年金制度を有する企業は、その多くが積立不足の状態にある。この積立不足を解消しなければ新制度へ移行できないとなると、給付額を引き下げざるを得ない。移行にあたっては、税制上、年金債務の償却に一定の猶予を持たせる等の措置を講じられたい。

 さらに、中小企業にこの確定拠出型年金制度を普及させるには、制度を利用する上で低コスト化を図ること、中小企業への投資教育を十分に行い制度に対する知識を与え、従業員の不安を払拭することが絶対に必要であり、商工会議所のように公共性・中立性が高く、全国にネットワークを有する組織を一層活用すべきである。

 なお、確定拠出型年金制度の導入とともに、既存の給付型年金制度については、硬直的な設計・運用を見直し、より負担の少ない制度に変更できるようにすることも必要である。

以上

【本件担当・問い合わせ先】
東京商工会議所