政策提言・要望

介護保険制度に関する提言 ~民間活用による「自立支援」に向けた介護サービスの充実~

平成14年5月9日
東京商工会議所

 介護保険制度が2000年4月に発足してから3年目を迎えた。それまでの行政による「措置」制度から、利用者が自由にサービスを選択できる「契約」制度へと移行し、利用者数、利用量ともに概ね順調に推移してきている。しかし、施行3年後の介護報酬・保険料の改定、5年後の制度見直しを控え、ケアマネジメント機能の低下や民間事業者の参入障壁、介護施設の供給不足など、介護サービスの質・量両面に亘って問題点が顕在化してきている。
 介護保険の目的は、高齢者ができる限り住み慣れた家庭、地域において、その有する能力に応じていきいきと自立した生活を営むことができるよう、必要なサービスを社会的に提供し、保健医療の向上及び福祉の増進をはかることにある。そうした高齢者の「自立支援」に向けて、介護保険を国民・利用者にとって信頼性と納得性の高い制度として定着させていくことが重要な課題である。
 そのためには、まず質の高い介護サービスが、量的にも充分に確保され、適正に配分されることが重要である。現行の介護報酬のもとではサービスの安定供給が難しくなっているのが実情であり、介護報酬について一定の見直しを行い、ケアマネジメント機能の強化と介護人材の資質向上に早急に取り組むべきである。
 また、介護サービス分野への民間事業者の参入を促進し、市場機能を通して民間の創意工夫を活かしたより質の高いサービスを供給していくことが重要である。特に介護・福祉サービスは、今後のわが国の新規・成長産業分野であり、その雇用創出効果にも期待が寄せられている。この分野での規制緩和と民間事業者の積極的な育成・振興は、日本経済全体の活性化にも大きく寄与すると考えるべきである。
 一方、高齢化の進展や保険制度の定着に伴い、中長期的に介護保険事業費の増嵩が懸念される。医療保険との適切な機能分担を踏まえた介護保険の効率的な制度設計と運営、事務コストの削減などに不断に取り組み、将来に亘る保険財政の安定化をはかるべきである。特に在宅介護サービス体制の充実、要介護度改善を重視した制度運営、さらには高齢者福祉施策としての介護予防事業の強化を進めることが今後の重要な課題である。

提言



1 在宅介護サービスの質的向上
(1)ケアマネジメント機能の強化
 介護保険制度の「要」とされるケアマネージャーが、本来期待される機能を充分に発揮できていない。膨大な給付管理業務に忙殺され、本来的な「自立支援」のためのケアプランの作成やモニタリングが疎かになっている。ケアプラン作成の介護報酬が低水準に置かれたため、豊富な実務経験と専門的知識を有したケアマネージャーの人材確保にも支障をきたしている。
 ケアマネージャーの仕事をやり甲斐と誇りの持てるものにし、サービスの質的な向上と量の確保をはかる必要がある。このため、ケアマネージャーの介護報酬の水準について一定の引き上げを行い、要介護者の「自立支援」に向けたマネジメント機能の強化を急ぐべきである。さらに、中長期的にはケアマネージャーを実務経験やスキルにより、管理・指導層へと階層化していくなど、高度な専門性を有する職種として明確に位置付けることを検討すべきである。

(2)訪問介護報酬「三類型」の見直し
 「身体介護」、「家事援助」及び「複合型」に分かれる訪問介護は、給付上の区分けが曖昧なため、「身体介護」が多いケースも「複合型」とされるなど、サービス提供者、利用者ともに混乱が生じている。また、介護報酬の低い「家事援助」にニーズが集中し、なかには「家事援助」扱いでそれ以上の高いサービスを要求されるケースも目立ち、事業者の採算悪化を招いている。
利用者にとって安心できるサービスの確保のためには、介護現場のホームヘルパーの処遇改善は不可欠である。現行の訪問介護報酬の「三類型」を一本化するとともに、公定上下限の範囲を設定し価格を弾力化することでサービスの競争促進をはかるべきである。

(3)資質向上に向けた責任ある研修・教育体制
  介護報酬について一定の見直しがはかられ、処遇の改善が行われるのに対応して、介護サービスの「要」であるケアマネージャー、ホームヘルパーには、当然のことながら一層の資質・能力の向上が求められる。事業者においては介護人材の専門的能力や技能の向上のため、責任ある研修・教育体制を整備することが喫緊の課題である。
一方、行政においてもケアの事例報告集、マニュアルなどを整備するほか、ケアの研修・教育・情報交換の機会を積極的に提供し、資質向上を支援する必要がある。また、孤独な環境のなかでストレスを感じやすいという職種の特殊性に鑑み、ケアマネージャーやホームヘルパーの心のケアを重視した相談窓口の設置など、介護人材のためのフォローアップを充実させることが望まれる。

(4)痴呆症ケアなど在宅介護の拡充
 介護保険制度は当初、「在宅重視」を掲げて発足したものの、現状は施設介護へのニーズが集中し、在宅介護サービスは本来の役割を果たしていない。住み慣れた自宅での介護を希望する高齢者が、在宅で安心して自立した日常生活をおくれるよう在宅介護サービスを強化し、その信頼性を高めることが喫緊の課題である。
見守りや話し相手などといった痴呆症の特性を考慮したサービス給付や時間加算のあり方について検討するとともに、痴呆ケアの研究を進め、痴呆症高齢者の在宅介護を充実させることが急務である。

(5)要介護度の改善を重視した介護サービスの強化
 すでに要介護となった高齢者に対して、要介護状態を悪化させない、さらにはこれを改善させることを重視した介護サービスを強化すべきである。要介護度改善に向けては、ケアマネージャーがケアのコーディネーターとして、医療機関、ホームヘルパー、各事業者などとの連携をはかりながら、高齢者個々人の過去の生活歴、特性を充分に踏まえたチームケアを実施していくことが重要である。併せて、要介護度改善に向けた意識を高め、提供するサービスの質を向上させるため、要介護度を改善させた実績を評価する仕組みを整備すべきである。


2 民間事業者の参入と競争促進によるサービスの向上
(1)サービス事業者間での競争条件の格差是正
  利用者がニーズに合ったサービスを自由に選択でき、また、提供されるサービスの質的な向上と量的な確保をはかるためには、市場機能を有効に活用することが不可欠である。民間事業者の創意工夫と競争により、多様で魅力あるサービスが円滑に提供されることにつながる。
しかし、民間事業者は、従来から地域の福祉事業を担ってきた社会福祉協議会など社会福祉法人と、課税や助成金などの面で公平な競争条件となっていない。介護サービスの提供主体間での競争条件の格差を是正し、公正な競争環境を確保すべきである。

(2)施設介護分野の規制緩和と民間事業者の参入促進
 大都市部での特別養護老人ホームなど施設の供給不足は深刻であり、希望者が入所待機を余儀なくされているケースもある。本格的な高齢化社会の受け皿として、在宅サービスを重点化する一方、施設サービスの基盤整備も充実させていく必要がある。 
 しかし、現状では、特別養護老人ホームなど施設介護分野への民間事業者の参入は厳しく規制されている。利用者の視点に立てば、事業者間の競争促進により利用者のサービスの選択肢が広がり、より良質なサービスを安価で受けることができることになる。民間事業者によるサービスの公益性確保を法律などで担保しながら、施設介護分野において規制を緩和し、民間主導型のサービス供給システムを目指すべきである。 


3 施設介護サービスの基盤整備と運営の適正化
(1)多様なニーズに対応した介護施設の整備
  施設介護へのニーズは依然高く、その受け皿として、今後は高齢者の状態に合わせて多様な住まい方を選べるような施設整備を重点化する必要がある。ケアハウスやグループホーム、有料老人ホームの増設を重視すべきであり、その際にはPFI方式などにより民間事業者を積極的に活用し、入居者の負担軽減につなげるべきである。
  施設計画では、利用者の生活習慣などを尊重しながら、利用者の立場に立った設計を施し、基本的には完全個室を確保し、少人数によるグループケアで、人間関係が作れ家庭のぬくもりを再現するような施設づくりを重視すべきである。

(2)施設介護におけるホテルコストの自己負担化
 施設介護へのニーズが急増し、施設介護から在宅介護へのシフトが進まない要因としては、施設介護の利用に係る経済的な負担の低さがあげられる。施設サービスにおいては、食費、住居費、共益費のいわゆる「ホテルコスト」が保険給付の対象となっており、在宅サービスとの間に著しい不均衡が生じている。
 在宅介護に比べて、施設介護では自己負担が軽い、という有利さは当然解消すべきであり、施設入居者のホテルコストを利用者負担とすべきである。サービス利用にともなう負担の均衡をはかり、施設介護と在宅介護の適正な機能分担を進めることは、保険財政の安定化のうえでも重要である。ただし、負担が困難な高齢者に対しては、行政として別途、救済策を講じるべきである。


4 利用者に対する情報公開と第三者評価システムの整備
 介護保険は利用者が自ら主体的にサービスを選択・契約できる仕組みであり、これをうまく機能させるためには、提供される介護サービスの情報公開と、公正な第三者評価が不可欠である。
サービス提供事業者は、自らのサービスの内容に関して、高齢者にも分かりやすく、きめ細かな情報を積極的に提供していくべきであり、結果としてそれが事業者の高い評価にもつながる。また、行政においては、事業者のサービスについての評価基準を早急に提示し、利用者の主体的な選択を情報面でサポートすべきである。
さらに、第三者評価については、NPO法人や評価専門会社など多様な第三者機関が行い、各事業者のサービス内容の審査やケアプランのチェックなどを公表していくことで、全体としてより質の高いサービスの供給につなげていくことが求められる。


5 低所得高齢者に対する保険料の減免措置の見直し
 低所得高齢者の保険料の単独減免については、厚生労働省からいわゆる「三原則」が示されているが、実際には多くの自治体においてこの原則を守らない減免措置が広く行われている。
地域の自主性は尊重するものの、保険料を納めることで必要なサービスを受けられるという保険制度の趣旨からも、無原則に減免措置を講じることは介護保険制度そのものを揺るがすことになる。また、安易な減免による減収分は、一般財源や保険料の上乗せにより補填されることから、結局は現役世代に負担を付け回すことになり、到底認めがたい。
各自治体は、少なくとも三原則を遵守すべく減免措置を見直すべきであり、そのうえで低所得高齢者の負担と減免措置の適正な在り方について早急に検討を行うべきである。また、資産を保有する低所得高齢者については、「リバース・モーゲージ」制度の活用についても併せて検討すべきである。


6 民間の創意工夫による介護予防事業の重点強化
 「要介護状態に陥らないための高齢者向けの介護予防」に力を入れることが、介護保険事業費を抑制するうえで、最も効果的であることは言うまでもない。市町村は老人保健事業で実施する疾病予防・健康増進との調整を図りつつ、「介護予防事業・生活支援」を充実させていく必要がある。
一人暮らしや身体機能の衰えた高齢者向けの配食サービスや家事支援・代行サービスなど、介護保険対象外のサービスをさらに充実させるべきである。また、現状では要介護者に利用が限定されている「住宅改修サービス・福祉用具サービス」を転倒防止など介護予防の観点から、要介護状態になる前からサービスを受給できる仕組みを早急に整備する必要がある。
さらに、高齢者自身に予防に対する意識が希薄ななかでは、従来型の集団的な予防教室や機能訓練だけなく、個々の高齢者にふさわしい「介護予防プラン」を用意し、実施していくことが重要である。介護予防事業は、効率的な運営と期待効果の高いサービス提供を重視する観点から、豊かなサービス企画力を持った民間事業者やNPO法人への委託をより積極的に進めるべきである。


7 介護保険に関する審議会体制の見直し
 介護報酬の見直しは、現在、社会保障審議会介護保険給付費分科会において審議されているが、介護保険事業の重要な担い手である営利事業者が参画していないことは理解しがたい。今後、ますます介護・福祉サービス分野への民間事業者の参入が進むことに鑑み、営利事業者を代表する関係団体を加え、介護サービスの現場・事業の実態を政策運営に反映していく必要がある。
 また、施行5年後の制度見直しに向けて、諮問・答申機関として介護保険制度を体系的かつ総合的に検討するための審議機関を創設すべきである。

以上

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