政策提言・要望

「年金制度の抜本改革」に関する意見

平成14年9月18日
東京商工会議所

 公的年金制度は、国民の老後の生活を保障するセーフティネットとして、持続的で信頼性の高い制度でなければならない。しかしながら、わが国の公的年金制度は、他の先進国にも例を見ない程のスピードで進行する少子高齢化により、財政破綻の危機に瀕している。さらに、給付と負担のバランスが崩れ、支払保険料に対する年金受給額に著しい世代間格差が生じていることも相俟って、国民の公的年金に対する不信や不安は年々高まっている。厚生労働省は、1989年生れの夫婦の場合、生涯で7,500万円の保険料を負担するのに対し、4,900万円の給付しか受けられないと試算しているが(間接的に負担している基礎年金の国庫負担分は除く)、重い保険料負担に見合うだけの給付が得られない制度設計は、特に若年世代の強い年金不信を導いている。

 また、被保険者とともに公的年金制度の重要な担い手である企業は、長引く景気低迷で厳しい経営環境のもと日々コスト削減努力を重ねているにも関わらず、従業員の福利厚生という意味合いで年間約10兆円にも及ぶ巨額の厚生年金保険料を負担している。しかし、従業員の公的年金への不安が高まる中、企業が保険料を負担する意義は薄れてきている。こうした状況にも関わらず、政府は、現行制度維持のため、今後約25年にわたり保険料を大幅に引き上げ続けることを想定している。ちなみに、厚生労働省の試算では、現行の標準報酬月額比17.35%の厚生年金保険料(労使折半)を2025年には同31.9%まで引き上げる必要があるとしている。厚生年金保険料の引き上げは、雇用コストの上昇を通じて、厳しい国際競争の中にあるわが国企業の競争力の低下を招くとともに、企業の国外移転に拍車がかかる可能性がある。また、新規雇用増進にも著しく悪影響を及ぼすことが想定される。公的年金保険料は、強制納付という意味では税と同じであり、企業収益にも法人税と並び極めて大きな影響を与えていることを鑑み、企業や従業員が容認できる範囲で給付と負担のあり方を早急かつ抜本的に見直すべきである。

 こうした中、2004年度の次期公的年金制度改革に向けた議論がスタートしているが、持続可能で安定した制度設計の確立、著しい世代間格差の是正には、微修正にとどまる従来型の改革手法ではもはや通用しないことを鑑み、次期改革は、国民や企業の年金不安や不信を払拭し、加入して満足できる制度となるような「改革」の名に値するものとしなければならない。

 以上の認識のもと、年金制度の抜本改革に関する基本的な考え方を下記の通り意見する。
 なお、項目ごとの詳細については、今後も追加的に提言を行っていく。

提言



1.基礎年金について

(1)基礎年金をシビル・ミニマムとして維持
 基礎年金は、国がすべての国民に対して最低限の安定した老後の生活を保障する「シビル・ミニマム」の機能を担うものとして今後も維持する。

(2)財源は全額国庫負担で税方式
 財源については以下の理由から「税方式」とするのが望ましい。税方式は、財源が安定的に確保できるので将来的な不安が少なく、財源を広く全世代に求めることで年金負担が世代間で公平となるという利点がある。基礎年金の全額税方式化の結果、国民年金の空洞化問題、第3号被保険者問題、被用者年金制度の財政的負担問題も解決する。逆進性の高い定額保険料問題、保険料徴収の事務コスト削減問題が図られるなどの利点もある。
 税方式化にともない国民の社会保険料負担は軽減されるが、一方新たに必要とされる財源の確保にあたっては、まずもって歳出構造の抜本的な見直しが大前提となることは言うまでもない。具体的な「税方式」への移行時期、税源のあり方や規模等については、政府は改めて基礎年金給付のあるべき水準を含めて国民に多様な選択肢を提示し、国民各層における広範な議論を通して充分なコンセンサスを得るべきである。


2.厚生年金(報酬比例部分)について

(1)基礎年金からの完全分離
 現在、国民年金の空洞化が進展しており、国民年金の未納者は265万人、免除者は505万人、保険料を一部しか納めていない者は167万人と計937万人存在し、これは、第1号被保険者2,154万人の43.5%に及んでいる(このほか、未加入者が99万人)。こうした空洞化の進展と高齢化による国民年金受給者の急増は、厚生年金制度の基礎年金費用負担(拠出金)を年々上昇させており、2000年度の基礎年金への拠出金は9.4兆円にも及ぶ。厚生年金制度は、本来企業が負担すべき性格のものではない国民年金の財政的な穴埋めを余儀なくされており、かつ報酬比例部分の給付原資も毀損されている状況にあるところ、基礎年金制度から完全に分離し、真に被用者のための制度とすべきである。

(2)保険料方式による賦課方式
 少子高齢化の進行に左右されない制度であるためには、世代間扶助ではなく、個人ごとの積立勘定とすることが理想的であるが、個人勘定に移行する場合、既に積立不足(330兆円、1999年現在)が存在するため、これを一挙に償却することは非現実的である。このため、保険料方式による賦課方式とする。

(3)保険料率の長期固定
 負担(保険料)は、保険料の一定化による安心感の醸成と世代間における不公平の是正を図ることが望ましい。厚生年金の基礎年金費用負担の廃止にともない保険料率は相当程度の引き下げが可能となる。また、給付水準についても、制度が持続可能な水準に調整すべきである。その際、既裁定者についても、現役世代の負担の痛みを応分に分かち合うべきで、基本的に給付水準見直しの対象とするのが妥当である。こうしたことを前提に、高齢化率が定常化する2050~2060年までは、厚生年金の保険料率を現行水準(17.35%)より出来る限り低率で長期固定すべきである。


3.公的年金積立金について

(1)後世代の負担軽減と計画的取り崩し
 高齢化率定常化のもとで、なお巨額の積立金を持つ意義は乏しく、かつ、巨額の積立金を積上げることは、非現実的である。現在の約137兆円(2000年度末)の積立金は、より負担の重くなる後世代の保険料負担を軽減するため、2010年から2060年の間、計画的に取り崩し、後世代の保険料負担を抑制する。

(2)全額国債で運用
 積立金の運用については、年金資金運用基金において2001年度から年金積立金を自主運用しているが、既に自主運用している約40兆円についても3兆円を超える累積運用損失を出していることを鑑み、米国の方式にならい、株式市場の影響を配慮しつつ、将来的には全額国債で運用する方向に改めるべきである。



4.年金税制について

(1)高齢者世代の税制優遇措置の縮減
 現役サラリーマン夫婦世帯の場合、年収220万円超で所得税が課せられるのに対し、65歳以上の高齢者夫婦世帯は、160万円の公的年金等控除もあり、年収340万円までは非課税となっている。しかし、高齢者は所得や資産の現状を見る限り、平均的には必ずしも社会的弱者ではなく、所得のある在職老齢者も勘案し、所得の公平性を確保する上で、年金受給者である高齢者世代に対する税制上の優遇措置(公的年金等控除、老年者控除)を縮減すべきである。


5.企業年金について

 公的年金の役割の見直しに伴い、今後安心して老後を暮らしていくためには、私的年金の果たす役割が重要になってくる。とりわけ、企業年金については、その役割が今まで以上に高まることが予想され、企業と個人の共同責任において、自由に設計・運用できるような環境整備や税制上の優遇措置を講じることなどが求められている。

(1)制度普及のための見直し
 この数年間、企業年金の選択肢を拡大すべく改革が進められてきたが、国民や企業にとってより利用しやすいものとするため、
①特別法人税の撤廃
 現在、時限措置として適用が停止(2003年3月31日まで)されている企業年金に係る特別法人税を撤廃すべきである。
②確定拠出年金制度における拠出限度額の引き上げ  確定拠出年金制度について、既存の退職給付制度からの移行を進めるために、拠出限度額(企業型で企業が実施する場合:年額21.6万円、企業が実施しない場合:年額43.2万円)の大幅な引き上げを行うべきである。また、中小企業を中心に普及している現況を考えるとマッチング拠出の導入と同時に、経済困窮による「引き出し条項」と「ローン条項」を付加すべきである。

(2)厚生年金基金の代行部分返納要件の緩和
  財政状況の極めて厳しい中小企業による総合型の厚生年金基金については、代行部分の積立金の移管が円滑に行えるように解散要件を緩和し、厚生年金基金の自主性が発揮できるようにすべきである。積立金不足の基金については、労使合意による給付引き下げを考慮しつつも、不足部分を分割で返納したり、返納期間を一時的に凍結するなどの経過措置が図られるべきである。

 
この意見書は日本商工会議所、東京商工会議所連名で提出した。

以上

【本件担当・問い合わせ先】
東京商工会議所

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