政策提言・要望

政策提言・要望

NOx・PM削減推進にあたっての要望について ― ディーゼル車排出ガス規制強化への対応について ―

2002年12月12日
東京商工会議所

 大気汚染や地球温暖化等環境問題への対応が喫緊の課題となっている中、環境と調和した企業活動がますます求められており、東京商工会議所としてもこれまで、企業の取り組みを支援するとともに、最近では、自動車排出ガス抑制にも効果のある首都圏3環状道路等の道路整備の促進を強く要請してきたところである。

こうした状況下、国ならびに東京都は、健康を害する惧れが大きいとされるNOx(窒素酸化物)やPM(粒子状物質)のとりわけディーゼル車からの排出抑制のため、段階的に規制強化を行うこととしている。これらの規制に対しては、運送事業者はもとより自家用ディーゼル車保有の一般事業の会員事業者においても、自主的に、低公害車・最新規制適合車への転換やPM減少装置(DPF、酸化触媒など)を装着するなど、前向きに取り組んでいるところである。

しかしながら、東京都内のディーゼル貨物車に限っても、営業用車は約5万7千台、また主に中小事業者が保有する自家用車は約15万3千台が規制の対象となっている。しかも、現下の厳しい経済環境、即ち、深刻な不況の長期化と金融機関の貸し渋りの事態の下、特に中小事業者は競争激化による採算の悪化と資金繰り難に苦吟し、低公害車等への買い替えができずトラックや建設用特殊車両の平均使用年数は長期化している。このままでは、期限までに全ての規制対象の保有車両について規制に適合させることが困難である。

他方、国ならびに東京都におかれては、この間、ディーゼル車排ガス規制に対応する事業者への各種助成策の実施や低硫黄軽油の早期供給体制の実現などに特段努めておられるが、新たな規制を予定通り平成15年10月より課するとすれば、中小事業者が現実に直面している状況を勘案され、事業者が規制に円滑に対応し環境問題の改善に貢献できるよう、これらの諸施策をより一層拡充すると同時に、低廉な低公害型ディーゼル車等の早期開発および普及促進など、環境整備を急ぐべきである。

以上の観点に立って、国ならびに東京都に対し、下記の通り要望する。

要望



1.中小事業者への資金調達面での助成策の拡充
(1)国および東京都の排出ガス規制に伴う補助制度の大幅な拡充
 環境省をはじめ関係省庁ならびに東京都におかれては、連携して、営業用車両・自家用車両、自己所有車両・リース車両、車両総重量・車種・車齢・型式を問わず、全ての排出基準非適合車の早急な低公害車等への買い替えやPM減少装置購入・装着などを可能とするため、とりわけ資金調達力の弱い事業者でも、規制への対応が円滑にできるような助成策の確立とそのための十分な予算を措置されるよう、強く要望する。
 特に、国土交通省におかれては、平成13年度からPM減少装置購入・装着への補助を実施し、14年度には低公害バス・トラック購入に対する補助も加えて27億円を予算措置されたが、引き続き15年度以降も同補助制度を延長するとともに、現在、補助対象から外されている一部の営業用車両および一般事業者保有の自家用車両についても補助対象とし、予算の大幅な拡充を図ることを強く要望する。
 また、経済産業省におかれては、平成10年度から「クリーンエネルギー自動車促進事業」として補助制度を開始し、平成14年度には170億円の予算を確保されているが、15年度以降も14年度同様に十分な予算措置を要望する。
 さらに、東京都におかれては、PM減少装置購入・装着への補助を平成13年度から開始し、14年度で30億円の予算を確保しているが、引き続き15年度以降も各種補助金や融資斡旋等の補助制度を延長し、かつ、できるだけ多くの申請者に対応できるよう、十分な予算の確保を強く要望する。なお、DPFについての、東京都の補助金は、費用の1/2までとなっているが上限額(小型30万円/1台、大型40万円/1台)があり、装着費を含め100万円を越す高額な費用負担となるものもある中で、十分な補助額とは言えず、中小事業者の負担の軽減を図るため、上限額を撤廃し費用の1/2まで補助が受けられる制度とすることを要望する。

(2)CNG(圧縮天然ガス)車普及促進のための補助制度の拡充
車両の買い替えはそれ自体が大きな負担であるが、さらにCNG車は通常の車両に比べ高額である。購入時(東京都の場合は買い替え時にのみ適用)には、通常車両との差額の1/2が国から、1/2が東京都から助成されるものの、東京都の補助金は上限額(小型30万円/1台、大型40万円/1台)があるため、十分な補助額とは言えず、中小事業者の負担は大きい。
 東京都におかれては、国の補助金と合わせてできるだけ事業者負担を軽減する補助制度となるよう、上限額の撤廃を強く要望する。

 また、CNG車の普及にあたっては充填スタンドの増設が不可欠であり、国ならびに東京都におかれては、スタンド設置者に対する補助制度の一層の拡充を要望する。
 
(3)無担保・無保証人の特別融資制度の創設
 現在の経済状況下では、国や東京都等の融資斡旋制度の利用を希望する中小企業は、新たな融資を受けることが非常に難しくなっていることから、国ならびに東京都におかれては、排ガス規制に対応するための新たな無担保・無保証人の特別融資制度を創設することを、強く要望する。

2.「自動車NOx・PM法」「環境確保条例」について
 上記の助成策の実現度いかんにもよるが、なお厳しさを増す一方の経営環境の下で、今後の動向によっては、独力では対応が難しい中小企業の多くは窮地に追い込まれる惧れがある。したがって、国ならびに東京都におかれては、事業者の規制への対応について、今後の事態の推移を注視され、必要に応じ柔軟な対応を要望する。

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所