政策提言・要望

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~流通業のシニアマーケット戦略~ 「シニア顧客の“コンシェルジュ”になろう。」 (be “CONCIERGE” for SENIORS)

2003年4月18日
東京商工会議所

 東京商工会議所流通委員会(委員長 國分勘兵衛 国分㈱会長兼社長)は、このほど「~流通業のシニアマーケット戦略~シニア顧客の“コンシェルジュ”になろう。」を発行した。
 強い購買力を持ち、今までない人口ボリュームを持つ「団塊の世代を中心とする新たなシニア世代(50~60歳代)」の消費動向に注目が集まっていることから、流通委員会では、平成14年4月に専門委員会(委員長 田中洋 法政大学経営学部教授)を設置し、約1年間にわたり、実務経験者・有識者を交えて議論を行ってきた。
 本報告書では、同専門委員会の議論と、本年2月に行った「シニア世代の買い物、サービス利用に関するアンケート調査」を基に、長引く不況下で厳しい経営環境に立たされている流通業・サービス業を中心とする会員企業が元気になるためのご参考として、新たなシニア世代(アクティブ・シニア)の特性・意識・興味・関心、消費をとらえるキーワードなどを体系的に整理した。
 同委員会では、本報告書を基に、一般向けにガイドブックを6月頃に作成し、また、シンポジウム等で普及啓発を行う予定。

(報告書概要)

1.増えるシニア、変わるマーケット
  ~今、なぜシニアマーケットに注目するのか~
 高齢化の進展により、50歳以上の「シニア世代」は、既に成人人口の半数近くを占めている。
 ここに、いわゆる「団塊の世代」が加わり、また、健康な高齢者が増えたことにより、活発な消費意欲を持つ「アクティブシニア」層が出現しつつある。
 彼らを対象とする市場は100兆円規模とも言われ、昨今の都心回帰傾向なども合わせて考えると、東京の流通業にとって今後、最も重要なターゲットとなることは間違いない。

2.シニア市場の主役=「アクティブシニア」とは?
  ~各種データに見る「アクティブシニア」の姿~
 新たな消費の主役として期待される「アクティブシニア」は、これまでの高齢者のイメージとは異なる特性を持つ。
 平均金融資産1349万円にもなる「経済的な豊かさ」と、1日平均6.64時間に及ぶ「時間の余裕」は言うまでもなく、実際の年齢よりも、自らを若く感じている「気持ちと年齢のギャップ」や、高くても気に入ったものを選ぶ「良質志向、本物志向」といった彼らの特性や意識、その他「自分の楽しみ・向上」「非日常の体験」など彼らの興味・関心を理解することが、シニア市場に取組む一歩となる。

3.アクティブシニアの消費をとらえるキーワード
  ~シニア世代と流通・サービス事業者へのアンケート結果から~
 今後の消費をリードするであろう「アクティブシニア」の特性や関心に対して、果たして現在の流通業は十分に応えているのだろうか。
 本報告書とりまとめにあたって実施した「シニア世代の買い物、サービス利用に関するアンケート調査」の結果からは、「買いやすさ・使いやすさ」や「大人としてのもてなし」などを求めるシニア生活者の志向性と、それらに必ずしも十分対応できていない事業者側の意識のギャップが明らかになった。
 こうした調査結果などをもとに、流通業がシニア市場に取組む際のポイントを、以下の8つのキーワードにまとめた。


①Comfortable     「かいてき」買いやすさ・使いやすさ
②One to One     「もてなし」あなたのための
③Nostalgia       「おもいで」懐かしさ・憧れ
④Community      「つ ど い」社会参加・地域参加
⑤Identity         「こだわり」自分らしさ
⑥Edutainment※   「ま な び」新しい知識・体験
⑦Relation        「つながり」孫・ペットと一緒に
⑧GEneration Free  「わ か さ」脱・世代感


(※EducationとEntertainmentの合成語。「楽しみながら学ぶ」「学びながら楽しむ」などの意味。)

 本章ではさらに、企業自身が、現在の商品・サービス提供をシニア向けに見直すためのチェックポイントや、シニア向け商品開発・サービス提供で事業展開を行っている多くの事例を取り入れることで、実際の事業展開に結び付けることのできるようまとめた。

4.シニア顧客の「コンシェルジュ」になろう
 前章であげたキーワードの頭文字を並べると“CONCIERGE”=「コンシェルジュ」となる。前章まででまとめたように、シニア世代の消費を確実にとらえるためには、8つのキーワードそれぞれに着目し、まさにコンシェルジュのように、お客様1人1人の声に積極的に耳を傾け、深い専門知識ともてなしの心を持って、商品・サービスを提供することが重要になってくる。
(※コンシェルジュとは、フランス語で「守衛」や「門番」を意味する。ヨーロッパのホテルでゲストに鍵を渡していたのが起源で、現在では食事や買い物の案内から、ビジネス文書の作成、旅行の計画まであらゆる客の要望に応えてあらゆるサービスをこなし、“NOとは言えない職業”と呼ばれている。)

以上
【本件担当・問い合わせ先】

東京商工会議所
地域振興部
担当 関田・佐塚
TEL 03(3283)7624