政策提言・要望

中小企業のための企業年金に関する要望

平成15年11月13日
東京商工会議所

 公的年金(国民年金・厚生年金保険)の抜本改革が急務となっているが、少子高齢化の影響や若年世代の保険料負担の抑制を考えると、将来的な「公的年金のスリム化=給付水準の低下」は避けられない。このため公的年金を補完するものとして、企業が従業員の退職後の所得確保のために実施する企業年金の役割が今後ますます高まる。
 企業年金については2001年に確定拠出年金法が、2002年に確定給付企業年金法がそれぞれ施行されている。一方、年金運用は2000年~2002年、3年連続のマイナスとなり年金資産は大きく毀損した。逆に今年度は一転して回復傾向となるなど、制度・資産運用など企業年金をめぐる環境は大きく変化を遂げている。
 大企業においてはすでに退職給付会計導入を契機に厚生年金基金の代行部分の返上や確定拠出年金の導入、給付の引き下げなど具体的な対応が先行している。しかし、中小企業の多くは年金資産の積立不足を抱え、廃止される「適格年金」から新制度への移行や、「総合型」厚生年金基金の問題等に有効な対応ができていない状況にある。
 中小企業においても自社の退職給付制度の見直しと併せて、企業年金の再構築に向けた検討が鋭意進められている。しかし、現行企業年金制度では企業の実情に合った制度構築をするうえで、充分な年金資産の形成や自由な給付設計、複数の制度間の移行などについて必ずしも十分な手当てがなされておらず、対応に苦慮する例も少なくない。
 わが国において企業の大宗を占め、大多数の雇用者を抱える中小企業の企業年金を充実させることは、国民の老後の生活の充実と安定につながることから、中小企業が利用しやすい制度改革と政策的支援が重要な課題である。
 企業年金制度は従来「個人貯蓄」との区分等、主として「税制」面から議論されてきた。しかし、公的年金の後退が将来確実となるなかで、企業年金の普及・発展は緊要な国民的課題である。企業年金は国民の自助努力による老後のための資産形成という「年金」の問題として、制度拡充につき特段の措置が強く求められる。以上の観点から中小企業のための企業年金について下記のとおり政策要望を行うものである。

要望



1.特別法人税の撤廃
 
 「特別法人税」は企業年金の積立資産残高に対して1%(地方税を合わせると1.173%)が課されることとなっている(平成17年3月末まで凍結中)。しかし、企業年金は国民が自らの努力と責任において老後の所得確保をはかる制度として、拠出時・運用時は非課税が原則であり、主要先進諸国にも特別法人税に類似の税はない。
 また、資金運用で過去3年間に亘り大幅なマイナス運用を余儀なくされたことや、90年代前半以前のような運用環境は将来に亘って期待できないこと等を踏まえると、今後も運用利益を大幅に引き下げ、企業年金の普及・発展に大きな支障を来たす。特別法人税は凍結の期限を待つことなく、直ちに廃止すべきである。

2.確定拠出年金の見直し

(1) 拠出限度額の引き上げ
 確定拠出年金の「企業型」の拠出限度額は、年額43.2万円(月額3.6万円)、他の企業年金と併用の場合は年額21.6万円(月額1.8万円)とされている。しかし、この水準では退職後のための充分な資金積立を行えない懸念があり、実際の導入例でも限度額を超える分を賃金前払いとする不合理な事例もある。
 確定拠出年金を他の企業年金と併用する例が多い大企業に比べ、中小企業では企業年金の管理運営コスト等の面から、確定拠出年金を他の企業年金と併用しないケースが多く想定される。また、従来の確定給付型の企業年金からの資産移管においても、低水準の拠出限度額が支障となっている例が多い。このため現行の確定拠出年金の拠出限度額の引き上げが緊要な課題である。
 限度額の設定では従来の退職給付制度が給与を基準として行われてきたことを踏まえ、個別企業において相応しい柔軟な制度設計を行いつつ、充分な給付水準を確保することが重要である。このため、給与水準が相対的に高い退職年齢間近の給与水準をベースに最高拠出限度額を設定する必要がある。そのうえで具体的な拠出設計については企業の労使に委ねる方法を採用すべきである。
 具体的な限度額については、確定拠出年金単独の場合で、加入者1人当たりの最高拠出限度額を少なくとも年額76.5万円または給与の13.3%のどちらか低い方へ引き上げる必要がある(*日本商工会議所:試算)。また、他の企業年金との併用においては、上記限度額について一定程度の調整を行うことが考えられる。

(2) 従業員からのマッチング拠出を認めること
  現行制度では「企業型」では企業からの拠出のみ、「個人型」では従業員からの拠出のみが認められ、「企業型」での従業員拠出、「個人型」での企業拠出という、いわゆるマッチング拠出が認められていない。しかし、中小企業等では企業から十分な拠出を期待できない場合があり、充分な年金資産の確保が難しいことも少なくない。
 また、公的年金の役割低下のなかで、従業員自身の自助努力による退職後のための資産形成を支援するという確定拠出年金の趣旨を活かすものとはいえない。税制上「個人貯蓄」との区分ができない、との議論が先行しがちだが、「年金」資産の確保促進という観点から、特に「企業型」での従業員からの追加拠出を認める方向の具体的検討が急務である。
 なお、マッチング拠出については、「個人型」を確定拠出年金の基礎的・普遍的な制度と位置付け、これに企業が各社の状況に応じて退職給付として上乗せ拠出する制度へと組み替えることも併せて検討すべきである。

(3) 従業員からのマッチング拠出を認めること
 現行の確定拠出年金制度では、高度障害や死亡の場合を除き、60歳まで資金の中途引き出しが認められていない。したがって、再就職しない場合や、再就職先で確定拠出年金が実施されていない場合には、資産口座は追加拠出のないまま残高運用と手数料引き落としが繰り返されるだけで、長期に亘って放置されることとなる。
 特に大企業に比べて労働移動が比較的多い中小企業においては、確定拠出年金の導入の検討に際して、資金の中途引出しができないことが従業員の理解を得られないなど大きな支障となっており、制度導入に踏み切れないケースも少なくない。
 生活困窮時においても資金の引き出しができないことも含めて、個人資産の主体的な管理・運用という観点からきわめて不合理な仕組みであり、資金の中途引き出しが可能となる方向での見直しが不可欠である。

3.中小企業の「適格年金」問題への対応の支援充実
(1) 「適格年金」の移管先として「特定退職金共済制度」を認めること
 中小企業に広汎に利用されている税制適格退職年金は平成24年3月の制度廃止が決ま っており、各企業はそれまでに新たな企業年金制度への移行を余儀なくされている。一方、確定給付企業年金法において「適格年金」の資産移管先として、確定給付企業年金、確定拠出年金、中小企業退職金共済(中退共)が認められている。
 しかし、中退共には規模制限があり、規模超の中小企業等では年金制度選択において不都合が発生する可能性が大きい。資産移管の対象として中退共と類似の制度である「特定退職金共済制度」を含めることで、企業による年金制度の選択肢を増やすべきである。


(2) 中小企業の企業年金問題への総合的な政策支援の強化
 多くの中小企業は廃止される「適格年金」の移行問題を抱えながらも、当面の厳しい経営環境のもとで、従業員の過去勤務債務分の積立不足を解消できないまま具体的な対応を先送りしている状況にある。しかし、対応の遅れは運用環境によっては積立不足がさらに増嵩し、将来の企業体力を致命的に損なうことにもなりかねない。
 企業年金は財務・税務面のみでなく、退職給付制度や人事・労使関係など多岐で複合的な課題に亘っている。大企業に比べて対応が遅れている中小企業に対して、広く企業年金・退職給付問題について総合的かつ適切な経営支援を行う必要がある。商工会議所等の中小企業関係団体が中小企業向けに有効かつ適切な情報提供を行うとともに、個別の相談・指導などの経営支援事業に取り組むことが強く求められる。
 このため、政策当局においても中小企業政策の一環として中小企業の企業年金問題への一層の理解と協力を強く望むものである。併せて、中小企業が適格年金から他の制度への移行を行う際の積立不足については、中小企業金融公庫等の公的金融機関からの特別融資の実施を検討すべきである。

4.地域の中小企業主体の「総合型」厚生年金基金への支援
 地域の地場産業など多数の中小企業が主体となって設立・加入している「総合型」厚生年金基金は、近年の運用環境の悪化等により巨額の積立不足を抱え、財政状態が著しく悪化している。経済低迷と加入企業の経営悪化などを背景に充分な追加拠出も難しく、厚生年金保険の代行部分に相当する最低責任準備金を確保できない(代行割れ)「総合型」基金が全国609基金中217に上っている。
 こうした年金資産の毀損は現在、中小企業の経営を大きく圧迫する要因となっており、地域経済の担い手たる中小企業の活力を損なっている。このため「総合型」基金の財政運営の健全化や新たな制度への移行が円滑に行われるよう適正な措置が強く求められる。
 まず、公的年金改正に関連して、厚生年金基金について免除保険料率の見直し(厚生年金保険本体の予定利率の変更および死亡率の改善分の反映)により、厚生年金保険本体との財政中立化をはかる必要がある。現在上・下限(1000分の24~30)が設定されている免除保険料率について、上・下限を撤廃し、基金ごとに完全個別化し、基金財政の円滑運営を確保することが不可欠である。
 次に、産業構造の転換や地域経済の低迷で加入企業の経営基盤そのものが大きく毀損し、基金の維持存続の見通しも立たない「総合型」基金が多数存在する。地域経済を支える中小企業の経営安定や地域雇用の維持・確保の観点から、「総合型」基金問題の早期解決が喫緊の課題であり、政府による強力な政策支援と特段の取り扱いが望まれる。特に財政危機にある基金について適切な指導等を行うとともに、解散時に納付すべき最低責任準備金については、他の基金との衡平性にも留意しつつ、一定の基準を設け、国からの財政支援を検討すべきである。

以上

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