経営戦略としてのワークライフバランス

第1回 なぜ今 、ワーク ライフ バランスか 

平成27年6月16日

ワーク ライフ バランスを推進しようとすると、働き方やマネジメントなど既存の仕組みを大きく変えなくてはならない状況にぶつかる。経営戦略から落とし込んだ人材戦略について紹介します。(全6回)

ワーク・ライフ・バランスへの誤解
 「ワーク・ライフ・バランス(WLB)」という言葉を頻繁に耳にするようになりましたが、この言葉は誤解も多いようです。仕事に傾斜した働き方を否定するものという誤解。仕事と家庭の両立問題を取り扱うもので主として女性のための施策であるという誤解。コストがかかるので、中小企業では対応が難しいという誤解。これらの誤解は、WLBを一面的にしか捉えていないことから生じています。
 WLBとは、組織の期待に応じて従業員自身が納得できる仕事ができ、かつ仕事以外の生活でやるべきこと、やりたいことができる状態です。仕事とそれ以外の生活の「バランス」というのは、両者が同じような配分で釣り合っている状態を指すのではなく、個人により、また同じ人間でもライフステージや置かれた状況により、多様なバランス状態があることを前提にしています。多様なバランスを受け入れる社会が「WLB社会」であり、そのためには、「仕事」の側面、つまり「働き方」を見直すことが必須です。

従来型の取組みの機能不全
 経営において「人」という資源は大きな潜在力を秘めています。日本の企業は、この人的資源の開発や従業員のモチベーションを上手にマネジメントしながら、経営的な危機を何度も乗り越え、強い経営体質を作り上げてきました。
 しかし、日本企業で人的資源が有効に活用されないという問題が起きています。人口構造の変化や経済のグローバル化など社会経済の構造変化によって、従来型の人材の育成や能力発揮のための取り組みが機能しなくなってきているのです。働く人自身も変化してきました。働く女性の増加やそれに伴う共働き世帯の増加、高齢化に伴う働く高齢者の増加や介護責任の増大、技術などの急速な変化に対応するための自助啓発へのニーズの高まりなど、仕事以外の生活も同時に重視する従業員が増えています。
 社会の構造変化に合わせて、人的資源の有効活用のあり方は常に変化していくべきものです。「働き方」を見直すとは、こうした経営課題から導かれる人材戦略面でのテーマなのです。

従業員福祉ではなく人材戦略
 働き方の見直しを進めようとすると、金銭的なコストや社内的な調整コストなど、何らかのコストが発生することになります。問題は、コストをかけてもそれに見合った見返りがあるかどうかです。直接的なメリットとして、人材の採用や定着、働く人の満足度や働きがいの向上につながるという点が挙げられます。
 働く人の中には、仕事と生活の調和がとれずにやむなく離職する人がいます。必要な人材が離職すること自体が問題ですが、一定割合の従業員が辞めていく状況では、長期的な視野に立った育成が行いにくくなります。仕事と生活の調和を図りながら就業継続できる仕組みがあれば、企業が従業員の資質向上に効果的に取り組むことができるようになります。
 また、仕事と生活のバランスに満足していると、従業員の仕事へのやりがい感も高まることがわかっています。外部の人間から見ても活気のある職場となり、採用の面でも好影響をもたらします。
 このように、従業員を長期に育成したい、仕事にやりがいを持って働いてほしいと考える企業にとって、WLB施策の実施はメリットが大きいのです。WLB施策を「ダイバーシティ・マネジメント=多様性推進」の視点で推進する企業も増えてきました。企業がどのような人材戦略をもって従業員と向き合うかにより、WLB施策の内容や有効性は異なります。WLB施策が、従業員福祉ではなく人材戦略と言われるのはこのためです。したがって、経営トップが明確な戦略をもって施策を推進しないと、前に進みにくい問題ともいえるでしょう。



執筆者
武石 恵美子(たけいし えみこ)

法政大学キャリアデザイン学部教授博士(社会科学)
筑波大学卒業後、労働省(現厚生労働省)、ニッセイ基礎研究所等を経て、2007年4月より現職。

掲載:東商新聞 2014年7月20日号




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