東京商工会議所(山口信夫会頭)は、4月2日から9日に実施した「新入社員研修」に参加した中堅・中小企業334社の新入社員823名を対象に行った意識調査結果を別紙のとおりまとめた(有効回答798名、97.0%)。
この調査は毎年実施しているもので、景気回復に一応の広がりが見られるなか、厳しい就職戦線を体験してきた新入社員の就職・仕事・生活観などを聞いた。
調査結果の主な点は次のとおり。
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○会社選択のポイントは、「自分の能力・個性が活かせる」と「仕事の内容がおもしろい」がともに5割を超え、会社の知名度より仕事の内容で会社を判断している人が多く、この傾向は近年、定着してきている。
○厳しい雇用環境にもかかわらず、依然として、将来は転職・独立を考える新入社員は3割を超える。反面、「定年まで」が約2割を占めるなど、安定志向を望む人も多い。女性については、何らかの形で仕事を続けたいという人が4割を超えるなどキャリア志向は相変わらず根強い。
○仕事をする上で身に付けたい能力は、多い順に「対人対応力」「決断力」「コミュニケーション能力」「責任感」と人への対応力や自己責任能力への不安が感じられるとともに、人との意思疎通が苦手だと考える人も多いことがうかがえる。
○理想の社長を有名人から選ぶと、「星野仙一」がトップ、第2位は「北野武」、第3位は「長嶋茂雄」で、選んだ理由としては「強力なリーダーシップ」「決断力」「独創性・創造性」などを挙げた人が多かった。
○社会問題となっているフリーターの増加については、男女とも「フリーターになるのはよくない」「とりあえず就職すべきだ」と考える人が多いものの、4割弱の人が自分の希望する仕事を求めてフリーターになることに一定の理解を示している。
○日本の将来で不安に感じるものは、年金・介護などを含む「老後の社会保障制度」を挙げた人が多く、次いで「経済運営」「教育レベルの低下」「少子・高齢化」の順で、若い世代の将来(老後)についての高い関心がうかがえる。
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≪平成16年度 中堅・中小企業新入社員の意識調査結果≫
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<調査の概要> |
【調査対象】 |
東京商工会議所が開催した社員研修を受講した中堅・中小企業
334社の新入社員 823名 |
【調査期間】 |
平成16年4月2日~9日 |
【有効回答】 |
男性 443名・女性 355名
計 798名(有効回答率 97.0%) |
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対象企業334社の内訳 |
業種別 |
資本金別 |
建設業 |
33社
(9.9%) |
1千万円以下 |
10社
(3.0%) |
不動産業 |
4社
(1.2%) |
3千万円以下 |
128社
(38.3%) |
製造業 |
58社
(17.4%) |
5千万円以下 |
59社
(17.7%) |
運輸・通信業 |
5社
(1.5%) |
1億円以下 |
56社
(16.8%) |
卸・小売業 |
104社
(31.1%) |
5億円以下 |
60社
(17.9%) |
サービス業 |
123社
(36.8%) |
5億円超 |
13社
(3.9%) |
金融業 |
4社
(1.2%) |
その他 |
8社
(2.4%) |
その他 |
3社
(0.9%) |
計 |
334社
(100.0%) |
計 |
334社
(100.0%) |
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回答新入社員の学歴分布 |
学歴 |
男性 |
女性 |
計 |
大学院卒 |
35人
(7.9%) |
11人
(3.1%) |
46人
(5.8%) |
大学卒 |
274人
(61.9%) |
210人
(59.2%) |
484人
(60.7%) |
短大卒 |
6人
(1.4%) |
49人
(13.8%) |
55人
(6.9%) |
専門学校卒 |
62人
(14.0%) |
48人
(13.5%) |
110人
(13.8%) |
高専卒 |
3人
(0.7%) |
4人
(1.1%) |
7人
(0.9%) |
高校卒 |
60人
(13.5%) |
32人
(9.0%) |
92人
(11.5%) |
その他 |
3人
(0.7%) |
1人
(0.3%) |
4人
(0.5%) |
合計 |
443人
(100.0%) |
355人
(100.0%) |
798人
(100.0%) |
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【アンケ-ト調査結果概要】 |
詳細データは問1~10の質問事項をクリックしてください。
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1.就職観・仕事・生活観(設問事項=6問) |
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○ 入社理由では、「自分の能力・個性が活かせそう」(52.4%)が最も多く、これに「仕事の内容がおもしろそう」(51.6%)、「職場の雰囲気がよかった」(40.7%)が続いている。ここ数年来、社名、待遇など企業のブランド志向から、自分にあった職場環境で能力を発揮したいと考える仕事志向の人が多く、この傾向が近年、定着してきている。 |
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○ 全体では約3割超が「とくに考えていない」としながらも、「チャンスがあれば転職」(23.7%)、「将来は独立」(10.5%)と、転職・独立を望む人が3割を超える。反面、「定年まで」が約2割を占めるなど、景気回復に広がりが見えてきてはいるものの、依然として厳しい雇用情勢を反映し、安定志向を望む人も一定の割合を占めている。
○ 女性では、「チャンスがあれば転職」(24.8%)、「定年まで」(11.3%)など何らかの形で仕事を続けたいと考える人が4割超(42.3%)と、女性のキャリア志向は相変わらず根強い。また、「時期をみて退職」(18.6%)は昨年に比べ6.4ポイント増加、「とくに考えていない」が約4割を占めるなど、キャリア志向はあるものの厳しい就職活動を体験し、とりあえず内定をもらった企業に就職した人や、今後の展望が見出せない人が5割を超えている。 |
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○ 「社会人としての自立」(32.0%)が最も多く、これに「安定した収入の確保」(20.3%)、「自分の夢の実現」(16.8%)、「自己キャリアの開発」(13.5%)が続いている。夢や仕事そのものへの満足など精神的な満足を追い求める面が主流を占めつつも、その一方で、厳しい雇用環境のなか、生活や収入面など現実的な物質的満足を追い求める面との両面がうかがえる。 |
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○ 昨年と同様、「仕事がうまくできるかどうか」(53.9%)、「上司や先輩・同僚との人間関係」(23.8%)で約8割を占め、「仕事」と「人間関係」に対する不安が顕著になっている。 |
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○ 「対人対応力」(42.0%)が昨年に比べ11.4ポイント増え、第1位。これに次いで「決断力」(23.3%)、「責任感」(22.2%)、「コミュニケーション能力」(20.6%)と続いている。仕事を進める上で、最も必要で基本的な人への対応力や自己責任能力などに対する不安が見られるほか、人との意思疎通が苦手だと考える人も多いことがうかがえる。 |
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○ 「20~29万円」(68.8%)が圧倒的に多く、次いで「19万円以下」(15.2%)の順になっている。昨年度の大卒事務系の初任給の水準が20万円超であることを考えると、ほぼ同水準の金額か、またはこれより少し上の金額を希望する人が多いなど、高望みする人は少なく現実的な人が多い。 |
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2.理想の社長像・イメージキャラクター(設問事項=2問) |
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【総 合】 |
1. |
星野 仙一 |
55人
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2. |
北野 武 |
32人
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3. |
長嶋 茂雄 |
30人
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4. |
中田 英寿 |
23人
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5. |
所ジョージ |
19人
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【男性回答】 |
1. |
星野 仙一 |
41人
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2. |
中田 英寿 |
15人
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3. |
北野 武 |
14人
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坂本 竜馬 |
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4. |
長嶋 茂雄 |
13人
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5. |
カルロス・ゴーン |
9人
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所ジョージ |
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【女性回答】 |
1. |
北野 武 |
18人
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2. |
長嶋 茂雄 |
17人
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3. |
星野 仙一 |
14人
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4. |
所ジョージ |
10人
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5. |
中田 英寿 |
8人
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《選んだ主な理由》 |
1. |
星野 仙一 |
強力なリーダーシップや決断力がある
厳しさとやさしさを持つ。カリスマ性がある |
2. |
北野 武 |
創造性・独創性がある。発想が豊か
リーダーシップがある |
3. |
長嶋 茂雄 |
カリスマ性やリーダーシップがある
人のよいところを引き出してくれそう。魅力的な人 |
4. |
中田 英寿 |
判断力とリーダーシップがある
カリスマ性を持つ。決断力と先見性を持つ |
5. |
所ジョージ |
親しみやすい。楽しく仕事ができそう
創造力がある |
(敬称略) |
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【総 合】 |
1. |
松井 秀喜 |
23人
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2. |
中田 英寿 |
17人
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3. |
イチロー |
16人
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4. |
星野 仙一 |
14人
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長嶋 茂雄 |
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5. |
長谷川京子 |
9人
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【男性回答】 |
1. |
松井 秀喜 |
16人
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2. |
イチロー |
13人
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星野 仙一 |
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中田 英寿 |
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3. |
長嶋 茂雄 |
9人
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4. |
長谷川京子 |
7人
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5. |
坂本 竜馬 |
6人
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北野 武 |
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【女性回答】 |
1. |
松井 秀喜 |
7人
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2. |
松嶋菜々子 |
5人
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長嶋 茂雄 |
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3. |
中田 英寿 |
4人
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4. |
はな、黒木瞳 |
3人
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イチローなど |
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5. |
長谷川京子 |
2人
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矢田亜希子など |
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(敬称略)
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3.その他(設問事項=2問) |
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○ 全体では、「気に入った仕事が見つからなくても、とりあえず就職すべきだ」(43.2%)が最も多く、これに「明確な理由もなくフリーターになるのはよくない」(37.8%)と、「希望する仕事が見つかるまで、定職につかないという考えは理解できる」(37.7%)がほぼ同数で続いている。これらから、男女とも「フリーターになることはよくない」、「とりあえず就職すべきだ」と考える人が多いものの、4割弱の人が自分の希望する仕事を求めてフリーターになることに一定の理解を示している。 |
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○ 年金・介護などを含む「老後の社会保障制度」(47.4%)が最も多く、これに「国の経済運営」(38.8%)「教育レベルの低下」(32.3%)「少子・高齢化」(31.0%)が続いている。この時期に、国会において、年金制度改革法案の審議が行なわれているということもあったが、若い世代が将来(老後)の社会保障問題に高い関心を持っていることがうかがえる。 |
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以上
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