中堅・中小企業の新卒者採用動向調査結果


 東京商工会議所(稲葉興作会頭)では、厳しい雇用環境の中、中堅・中小企業の新卒者採用動向を探るため、このたび会員企業5000社を対象に調査を実施し、結果をとりまとめた。
 調査期間は平成12年10月27日~11月9日。回答企業数683社(回答率13.7%)。
 調査結果の概要は以下のとおり。

○「2000年4月時点の採用」は、半数の企業で採用を計画していたが、そのうち95.9%の企業で新卒者を採用したと回答。平均採用人数は4.7人。
 前年度と比較して、「採用人数が上回った」と回答した企業が40.3%にのぼり、「下回った」(26.8%)と回答した企業より13.5ポイント多い。
○「2001年4月採用予定」の企業のうち、約7割が既に新卒予定者を確保。(残り3割の企業は、未だに確保できず採用活動は長期化の傾向。)一方「採用を予定していない」企業が全体の4割を超えており、雇用に慎重な姿勢も見られる。
○ 予定通り採用できない原因としては、4割の企業が「いい人材がいない」と回答。企業の求める人物像とのミスマッチを指摘している。
○ 中堅・中小企業でも採用時期が早期化の傾向。今年の4月以前に開始した企業は約4割にものぼる。
○ 採用活動における募集方法は、「学校への求人票の送付」「学校就職部への訪問」など、依然として学校依存型が多い。
○ 新卒者1名にかけられる採用コストは、10万~20万円を限度とする企業が約6割。
○ 採用にあたり重視するポイントは、知識や能力よりも「積極性」「常識・マナー」といった人間性を重視する回答が多く約7割を占めている。
○ 採用活動でのインターネット利用には、「迅速性」や「利便性」を感じているものの、手軽さ故の"学生の本気度"に疑問を持つ企業も少なくない。
○ 「インターンシップ制度」導入については、過半数の企業が関心を持っている反面、「考えていない」企業も35%にのぼった。

【本件に関するお問い合わせ】東京商工会議所会員サービス局人材情報センター
               TEL(3283)7590:山本・三浦

中堅・中小企業の新卒者採用動向調査結果

【調査目的】 企業の採用活動の多様化が進む中で、中堅・中小企業の新卒採用活動の実態を把握するもの
【調査対象】 東京商工会議所会員企業の中堅・中小企業5000社を対象(資本金1000万以上3億円以下かつ従業員30名以上300名以下)
【調査期間】 平成12年10月27日~同年11月9日
【調査方法】 調査票郵送後、FAXによる回収
【有効回答】 683社(回答率 13.7%)

回答企業・業種別分布
建設業 84 12.3 %
製造業 222   32.5  
運輸業 31   4.5  
商 社 170   24.9  
専門店 13   1.9  
飲食業 7   1.0  
金融業 5   0.7  
不動産業 1   0.1  
サービス業 100   14.6  
情報・サービス業 50   7.3  
  683   100.0  

【調査結果】


問1 2000年4月時点の新卒者採用数
    回答企業683社のうち、53.0%の企業が新卒者採用を計画していたが、ほとんどの企業で「採用した」(95.9%)としている。「採用した」と回答した企業の採用人数は、1名から5名と回答した企業が72.9%にのぼり、平均採用人数は4.7人。
  一方で、「採用予定なし」と回答した企業も、46.7%と半数近くに達している。

問2 2000年4月時点の採用人数と前年度(1999年4月)の比較
  採用活動を行った375社のうち、「学校への求人票の送付」(67.2%)、「学校就職部への訪問」(32.3%)と、7割の企業が直接学校に対し、採用活動を行っている。
  また、「会社説明会」(33.6%)、「自社ホームページの作成」(28.8%)といった自社における採用活動がこれに続いている。このうち、自社ホームページ作成については、昨年の調査結果と比べて倍増しており、インターネットを利用した採用活動が中堅・中小企業へも普及している様子が伺える。
  一方、外部機関利用については、「合同会社説明会」(23.5%)、「求人情報誌」(19.7%)、「民間就職情報会社」(16.3%)と続いている。
    
問3 2001年の新卒者採用は予定通り確保できたか
  採用予定のある375社のうち、「予定通り新卒者が確保できた」(50.9%)、「予定通りではないが確保できた」(18.7%)を合わせると、7割の企業が確保できたと回答している。
  一方で「現在も採用活動中」(27.2%)、「採用できない」(3.2%)と、未だ採用ができない企業もあり、採用活動の長期化傾向が伺える。
  また、「採用予定なし」と回答した企業が全体の4割を超えており、雇用に慎重な企業も少なくない。

問4 予定通り新卒者採用ができない理由は何処にあるか
  予定通りに新卒者採用ができない184社のうち、「いい人材がいない」と回答した企業が38.6%と最も多く、自社の求める人物像とのミスマッチを指摘している。
  また、「自社PR不足」(16.3%)、「採用期間が短かった」(11.4%)「人事担当専従者がいない」(7.6%)、「コスト不足」(5.4%)といった企業側の事情に起因しているとの回答も4割に達した。

問5 2001年採用活動は何月頃から開始したか
  採用を予定している375社のうち、今年5月~6月からスタートした企業が24.0%と最も多い。ただし、昨年の12月以前よりスタートした企業が8.3%、1月~2月が9.3%、3月~4月が19.7%と今年4月以前よりスタートした企業が合わせて約4割を占め、採用活動の早期化傾向が伺える。
  また一方で、3分の1の企業(126社)が7月以降、採用活動を開始または予定している。

問6 2001年採用活動でどのような募集ツールを利用したか(複数回答)
  採用活動を行った375社のうち、「学校への求人票の送付」(67.2%)、「学校就職部への訪問」(32.3%)と、7割の企業が直接学校に対し、採用活動を行っている。
  また、「会社説明会」(33.6%)、「自社ホームページの作成」(28.8%)といった自社における採用活動がこれに続いている。このうち、自社ホームページ作成については、昨年の調査結果と比べて倍増しており、インターネットを利用した採用活動が中堅・中小企業へも普及している様子が伺える。
  一方、外部機関利用については、「合同会社説明会」(23.5%)、「求人情報誌」(19.7%)、「民間就職情報会社」(16.3%)と続いている。

問7 利用した募集ツールに満足しているか
  「十分満足している」(14.9%)「まあまあ満足している」(58.4%)と7割の企業が満足していると回答。「満足していない」と回答した企業は17.6%であった。

問8 新卒者1名にかけられる採用コストはどの位か
  回答企業683社のうち、10万円迄(38.8%)、20万円迄(21.4%)と、6割の企業が10万~20万円を限度としている。
  一方、50万円~60万円迄と回答した企業が10社、100万円と回答した企業も2社あった。

問9 新卒者採用にあたり、一番重視するポイント
  「積極性」(48.5%)、「常識・マナー」(19.3%)と、人間性を重視する回答で約7割を占め、反面「専門知識」(10.1%)、「パソコン操作」(1.3%)、「語学力」(0.7%)など、専門性を期待する回答が総じて低い。これらの回答は、択一式の設問であることから、企業が新卒採用時点に求める要素の優先順位とみることもできる。

問10 採用活動にインターネットを利用したか
  「利用した」企業が26.4%、「利用しない」と回答した企業が67.8%と約7割に近い企業が利用していないと回答している。

問11 採用活動のインターネット化をどう思うか(複数回答)
  インターネットを利用したと回答した180社のうち、「採用情報が迅速に提供できる」(52.2%)、「応募学生が増える」(43.3%)、「手間・コストが省ける」(37.8%)と、インターネットの持つ迅速性と利便性にメリットを感じている企業が多い。
 一方、デメリットとしては、「応募学生の信憑性に疑問」(31.7%)が最も多く、手軽さ故の"学生の本気度"に疑問を持つ企業も少なくないことを示している。
 また、「応募学生が増えるがその対応に追われる」(17.8%)、「就職情報会社への登録などコストがかさむ」(10.0%)とかえって手間・コストが増えると予想している回答もあった。

問12 「インターンシップ制度」の導入についてどう思うか
  「既に導入している」(6.9%)、「条件が合えば導入したい」(15.1%)、「検討したい」(36.5%)と、過半数の企業で関心を持っており、前向きに検討しようとする企業側の姿勢が伺える。
  一方で、「考えていない」(35.3%)と回答した企業が3分の1にのぼり、このうち、その理由として、「受け入れ体制の未整備」を挙げた企業が24.9%を占めている。また、現場サイドからの理由として「事故など労災に対する対応が困難」「現場を知ってしまうと今後の採用が不利(飲食店)」「短期間での取得は無理(意味がない)」などの指摘がある。

問13 最近の新卒者採用について感じること
○ 自由意見の中では、最近の新卒者に対し、「積極性をはじめ常識・マナー・基礎知識または体力の不足」を指摘する企業(10社)が多く、社会人としての基礎的な要素に不安を抱いている姿が伺える。
  また、いったん就職したあと定着せず、「簡単に会社を辞める」ことに触れた企業(3社)もあり、その原因として職業選択の動機の曖昧さなどを挙げている。
  一方、専門知識や実務経験に基づいた即戦力を期待して、「中途採用」にのみ人材を求めている企業が5社あった。
 
○ 最近の雇用情勢の傾向に関連して、「採用活動にインターネットを利用が、応募学生の真剣味に欠けた姿勢に懲り、DMでの応募に戻すことを検討している」企業があったほか、「IT分野志望の学生の増加から、営業を中心とした中小企業への就職が敬遠される」といったミスマッチ現象、「組織として人員整理をしている中で新卒採用がしにくい」との離職者への配慮、「電子系の学生を求めているが、全体的に技術系の人材が少ない」といった学生のホワイトカラー志向を指摘する意見があった。

○ 東商が実施する新卒採用支援事業への要望の中で、「実施時期の繰り上げ(2-3月)を望む」企業がある一方で、「採用開始時期をもっと遅らせるべき(就職協定時)」の意見もあり、年々早期化する学生の就職活動への対応に苦慮する企業の姿勢が伺える。

以上
問1 2000年4月時点の新卒者採用数は何名ですか
(回答対象企業数683)            
採用できた 347 50.8 % *採用を予定した企業362社
採用できなかった 15   2.2    
採用ない 319   46.7      
無回答 2   0.3      
  683   100.0      
(採用できた企業の採用人数)
1名~5名 253 72.9 %    
6名~10名 66 19.0      
11名~20名 20 5.8      
21名以上 8 2.3      
  347 100.0      


問2 2000年4月時点の採用人数と前年度(1999年)の比較してどうですか。
(回答対象企業数347)        
前年度より上回った 140 40.3 %
前年度より下回った 93   26.8  
前年度と同程度 110   31.7  
無回答 4   1.2  
  347   100.0  


問3 2001年4月の新卒者採用は予定通り確保できましたか。
(回答対象企業数683)              
予定通り採用できた 191 28.0 %   *採用を予定した企業375社
予定通りではないが採用できた 70   10.2   ※採用を予定通り確保できない企業
一人も採用できなかった 12   1.8     184社
現在も採用活動通中 102   14.9    
採用予定なし 299   43.8        
無回答 9   1.3        
  683   100.0        
(予定通り採用できた企業の採用人数)
1名~5名 124 64.9 %
6名~10名 40   20.9  
11名~20名 18   9.4  
21名以上 4   2.1  
無回答 5   2.6  
  191   100.0  
(予定通りではないが採用できた企業の採用人数)
1名~5名 55 78.6 %
6名~10名 9   12.9  
11名~20名 3   4.3  
21名以上 0   0.0  
無回答 3   4.3  
  70   100.0  


問4 予定通りに採用できなかった企業に伺います。予定通り新卒者採用ができない理由は何処にあると考えますか。
(回答対象企業数184)        
いい人材がいない 71 38.6 %
自社企業PR不足 30   16.3  
採用活動期間が短かった 21   11.4  
採用専従者がいない 14   7.6  
コスト不足 10   5.4  
その他 38   20.7  
無回答 0   0.0  
  184   100.0  


問5 採用活動された企業に伺います。採用活動は何月頃から開始しましたか。
(回答対象企業数375)        
1999.12月以前 31 8.3 %
2000.1月~2000.2月 35   9.3  
2000.3月~2000.4月 74   19.7  
2000.5月~2000.6月 90   24.0  
2000.7月~2000.8月 73   19.5  
2000.9月~2000.10月 49   13.1  
2000.11月以降 4   1.1  
無回答 19   5.1  
  375   100.0  


問6 採用活動をされた企業に伺います。採用活動にはどのような募集ツールを利用しましたか。
(回答対象企業数375:複数回答可)        
学校への求人票の送付 252 67.2 %
会社説明会の開催 126   33.6  
学校就職部への訪問 121   32.3  
自社ホームページの作成 108   28.8  
合同会社説明会への参加 88   23.5  
求人情報誌への参加 74   19.7  
民間ホームページへの参加 61   16.3  
ゼミ指導教授への訪問 42   11.2  
新聞求人欄への掲載 8   2.1  
その他 37   9.9  
(対象企業375社) 917      


問7 採用活動された企業に伺います。利用した募集ツールに満足していますか。
(回答対象企業数375)        
十分満足している 56 14.9 %
まあまあ満足している 219   58.4  
満足していない 66   17.6  
無回答 34   9.1  
(対象企業375社) 375   100.0  


問8 全社に伺います。新卒者1名にかけられる採用コストはどの位ですか。
(回答対象企業数683)        
10万円迄 265 38.8 %
20万円迄 146   21.4  
30万円迄 74   10.8  
40万円迄 21   3.1  
その他 72   10.5  
無回答 105   15.4  
  683   100.0  


問9 採用するにあたり、一番重視するポイントは何ですか。
(回答対象企業数683)        
積極性 331 48.5 % 
常識・マナー 132   19.3  
健康・体力 70   10.2  
専門知識 69   10.1  
パソコン操作 9   1.3  
語学力 5   0.7  
その他 26   3.8  
無回答 41   6.0  
  683   100.0  


問10 採用活動にインターネットを利用しましたか。
(回答対象企業数683)        
利用した 180 26.4 %
利用しない 463   67.8  
無回答 40   5.9  
  683   100.0  


問11 インターネットを利用された企業に伺います。採用活動のインターネット化をどうように考えますか。
(回答対象企業数180:複数回答可)        
採用情報が迅速に提供できる 94 52.2 %
応募学生が増える 78   43.3  
手間・コストが省ける 68   37.8  
簡単にエントリー登録できるようになったので、応募学生の信憑性に疑問がある 57   31.7  
採用期間の長期化に柔軟に対応できる 44   24.4  
応募学生が増えるがその対応に追われる 32   17.8  
就職情報会社への登録などコストがかさむ 18   10.0  
インターネットを扱う人材が不足している 11   6.1  
わからない 14   7.8  
その他 3   1.7  
  419    


問12 「インターンシップ制度」の導入についてどう思いますか。
(回答対象企業数683)        
既に導入している 47 6.9 %
条件が合えば導入したい 103   15.1  
検討したい 249   36.5  
考えていない 241   35.3  
無回答 43   6.3  
  683   100.0