会頭コメント

会頭コメント

改正公職選挙法の成立について

2000年10月26日
東京商工会議所

1.そもそも参院比例代表に非拘束名簿方式を導入するという与党側の提案もやや唐突であったが、成立のプロセスに問題が残ったように思う。国民の代表を選び、かつ政党の利害や勢力分野に直接影響を及ぼす制度の改正は、本来国民に開かれた国会の場で十分な審議を尽くすべきであったにもかかわらず、成立を急ぐ与党側と、欠席戦術という手段に訴えた野党側双方に、国民に対する真摯な態度が欠けていたと言われても仕方がないのではないか。
 1党が衆参両院で単独過半数を獲得するのが難しい連立時代になり、与野党に譲り合う余裕がなくなってきた面も否定できないが、今後、単なる根回し型の国対政治という意味ではなく、今回のような国会の混乱を回避し、正々堂々と討議を戦わせるための何らかのルールづくりに取り組む必要がある。

2.内容についても問題が残る。政党を中心とする比例代表である以上、得票を伸ばすためには、あくまでも政党の政策に対する支持を訴えていくのが筋である。有権者に耳の痛い政策でも、その必要性を粘り強く説得するのが責任ある政党の姿である。
 個人名で投票してもその所属政党の得票とみなすことになれば、著名人を擁立するのが有利なのは目に見えている。もとよりそうした結果を招くわれわれ有権者の投票態度に問題があることは指摘しておかなければならないが、二院制のもとで、衆院とは違った使命を担う参院のあり方が問われている時期であるだけに、やや残念という感想を持った。

3.なお、今回は参院の10議席削減が盛り込まれてはいるが、都道府県選挙区別の議員一人当たりの人口格差は最大で現在5倍近い数字になっている。削減自体は結構なことだが、大事なのは民主主義の基本である1票の格差を是正することであり、定数の削減をすすめる中で増減調整を行い、全体として格差をなくす姿勢をはっきりと打ち出すべきである。

以上