東京商工会議所

シーイヤー株式会社

運動セミナーや職場環境整備により、日常生活の中で運動を意識づけ
長時間のデスクワークで発生する健康課題の解決を目指す

  • 組織・体制づくり
  • 運動

シーイヤー株式会社

本社: 東京都台東区台東2-19-6 タケイビル5階

代表者名: 代表取締役 村山 好孝 氏

設立: 2018年

従業員数: 10名

事業内容: 音響技術の提供、ソフトウェア開発、コンサルティング事業、音響ハードウェア開発事業、自社特許技術のライセンス事業

 BtoBをメインとした音響技術専門会社。独自の音響技術(特許・ノウハウ)と豊富な知識・経験をもとに、国内多数のメーカーやブランドのプロダクト開発、音響技術の提供やコンサルティングを行う。

専門家派遣制度を利用した期間

2021年11月~2022年3月

支援専門家

・中小企業診断士
・健康運動指導士

自社開発のスマートフォン用の外付け集音マイクDOMINO 2MIC(ドミノトゥーマイク)。動画撮影やボイスレコーダーなど、様々なシーンでの収音に対応
同社では競争しながら歩数を伸ばすゲーム感覚のウォーキングアプリアプリも活用
縦横約9cmのサイズからは想像がつかないほど、圧倒的な音の広がりと高音質再生が可能なBluetoothスピーカー・cear pavé(シーイヤーパヴェ)
専門家派遣制度を利用したきっかけ

デスクワーク中心の業務による慢性的な運動不足など、従業員の生活習慣の改善に会社全体で取り組むため、専門家からの具体的なアドバイスを受けたい。

「音の可能性を最大限に引き出し、新たな価値・体験を提供する」をスローガンに、音響技術の提供やソフトウェアの開発、自社特許技術のライセンス事業などを手掛けるシーイヤー。2019年には世界大手半導体メーカー・クアルコム社(アメリカ)に認められた企業だけが参加できるQualcomm® Extension Programに正式参加するなど、その技術力は世界的にも高く評価されている。
同社が健康経営に関心を持ったのは、日頃から交流のある東京商工会議所の職員との会話がきっかけだった、と取締役の廣木洋介氏は言う。
「東商の担当者さんとのお話の中で、『健康経営』を知りましたが、正直その時は、私自身も仕事に熱中するあまり、健康的な生活を心がけるという意識は持っていませんでした。しかし、従業員の健康づくりが会社の発展につながる、という健康経営の視点は新鮮で、社員一人ひとりの技術やノウハウがサービスの根幹となっている当社にとって、とても重要な考え方だと思いました。また、オフィスマネージャーの村山は、日頃から従業員の健康を気にかけて、健康診断受診管理やオフィスの感染症対策を進めてくれており、会社として健康経営を推進していくことについて相談したところ、賛同してくれました」(廣木氏)
村山氏は、日頃から、同社の従業員の健康課題について考えることがあったという。
「当社は従業員10名のうち7名が研究開発スタッフで、各々の裁量で仕事を行っています。仕事の進め方や働く時間などが、各々の裁量に任せられている一方で、注文が多い時期や納期近くは、残業が多くなりがちです。また、業務のほとんどがデスクワークということもあって、座りっぱなしにより、肩こりや腰痛に悩む従業員の声も聞こえていましたし、健康診断の結果にも、慢性的な運動不足が表れているように感じていました。日頃から、健康診断の受診勧奨やインフルエンザの予防接種の費用負担、感染症対策の実施など、従業員の健康を考えて取り組んではいましたが、生活習慣の改善へのアプローチまでは手が回っていない状態でした」(村山氏)
そこで、会社全体として、従業員の生活習慣の改善に繋がる具体的な取組を進めるにあたり、専門家からのアドバイスを受けたいと考え、専門家派遣制度に申し込んだ。

取締役 廣木 洋介 氏(左)オフィスマネージャー 村山 氏(右)
取締役 廣木 洋介 氏(左)
オフィスマネージャー 村山 氏(右)
専門家派遣による支援と取組
  • ● 健康企業宣言の実施、健康づくり担当者の選任による健康経営推進の体制づくり
  • ● 昇降デスクの導入による職場環境の改善
  • ● 仕事中にもできる運動に関するセミナーの開催

専門家の中村稔氏(中小企業診断士)は、同社の健康経営に対する取組をヒアリングし、健康診断の受診率が100%であること、診断結果に応じた受診勧奨などフォローがきちんと実施されていること、さらに感染症対策への取組がきちんと行われていることなどを高く評価した。
そして、同社はまず、健康企業宣言を実施。村山氏を健康づくり担当者に選任し、健康経営を推進する体制を整えた。
さらに、中村氏のヒアリングにより、やはり、長時間のデスクワークによる慢性的な運動不足の問題の解消が必要だと考えた同社は、日常的に運動を習慣化できる環境づくりを目標に取組を開始した。
座りっぱなしでいることは「座位行動」と呼ばれ、健康を大きく損なうリスクの高い行動だということが分かってきている。長時間の座りっぱなしは、血流の悪化、エネルギー消費量の減少、足の筋力の低下によって、肩こり・腰痛、ひいては肥満や生活習慣病に繋がりかねないのだ。
そのため、職場環境の改善として、高さを自由に変えられる昇降デスクの導入に踏み切った。
「自分の身長に合わないデスクで座りっぱなしで仕事をすると、おのずと姿勢が悪くなり、首や肩、背中に負担がかかっているな、と以前から気になっていました。そこで、まずは昇降デスクを2台導入しました。スタンディングデスクとしても使用できますので、仕事に集中しても、姿勢が悪い状態で長時間座り続けることを防ぐことができます」(村山氏)
また、仕事の合間にもできる運動について、専門家の小原桂子氏(健康運動指導士)によるセミナーを2回実施した。
1回目は運動習慣の第一歩として、運動できる体づくりと日頃のケア法を実践。座ったまま・立ったついでにできるストレッチや、疲れにくい座り方、セルフマッサージなどのレクチャーを受けた。
2回目は「正しい姿勢と効果的なウォーキング」をテーマに、自分の姿勢のチェックを行った上で、正しく体を使った座り方・歩き方について実践しながら学んだ。
「コロナ禍であることを踏まえて、セミナーは2回ともオンラインで実施しました。全員で時間を合わせてオンラインセミナーを開催すること自体が初めての試みでしたので、最初は皆緊張というか、戸惑っているような様子でした。でも、画面を見ながら先生の動きを真似して動いていくうちに、『意外と難しいなぁ』などと声が漏れ始め、最終的には小原先生と対話しながら楽しく取り組むことができました」(廣木氏)
小原氏のセミナーで紹介されたストレッチやアドバイスは、その後も継続して取り組めるよう、その内容をポスターにして、手洗い場など、従業員が目にしやすい場所に掲示した。
また、運動以外の分野についても、掲示物により、生活習慣改善の工夫について情報提供を行った。例えば、栄養バランスを整えるためのアドバイスや、飲料に含まれる糖分の摂りすぎへの警告、禁煙の必要性等の情報を、イラストとともに分かりやすくまとめて掲示し、従業員が健康的な生活習慣を日頃から実践できるよう周知した。

ボタン一つで高さが自由に変えられる昇降デスクを2台購入
ボタン一つで高さが自由に変えられる昇降デスクを2台購入
1回目のセミナーでは、椅子に座ったままできるストレッチなど、デスクワークの合間に取り組めるものを紹介子
1回目のセミナーでは、椅子に座ったままできるストレッチなど、デスクワークの合間に取り組めるものを紹介
2回目のセミナーでは、正しい歩き方をレクチャー
2回目のセミナーでは、正しい歩き方をレクチャー
手洗い場の掲示物(ストレッチ方法のほか、食生活、喫煙に関する生活習慣改善の工夫も情報提供)
手洗い場の掲示物(ストレッチ方法のほか、食生活、喫煙に関する生活習慣改善の工夫も情報提供)
取組による効果、今後の展望
  • ● 日常生活に運動を取り入れる意識づけにより、従業員に体を動かす習慣が定着してきた。
  • ● 健康優良企業「銀の認定」を取得することができた。

導入した昇降デスクについては従業員から好評の声が挙がっている。現在は試験的に2台だけの導入だったため、今後さらに追加していきたいという。
さらに、運動セミナーで学んだストレッチをデスクワークの合間に行ったり、通勤時になるべく階段を使うよう意識したりなど、各従業員が、日々の生活の中で、体を動かすタイミングを自分で作れるようになってきたようだ。一連の取組が、従業員の生活習慣にも少しずつ変化をもたらしてきている。
また、これらの取組を継続した結果、2023年1月には、健康優良企業「銀の認定」も取得することができた。
専門家派遣終了後も、従業員への運動の意識づけを、引き続き積極的に行っている。その一つが、ゴルフボールを活用したマッサージだ。これは小原氏のアドバイスを取り入れたもので、仕事の合間に足裏や肩、首などにゴルフボールを押し当ててマッサージをする。
「会社でゴルフボールを購入し、従業員に配っています。デスクの周りやテレワークを行う自宅などに置いてもらって、いつでも体をほぐすことができるようにしています」(村山氏)
もう一つ、新たに取り組んでいるのが、社内で作成した健康カードの活用だ。カードには「ちょっとストレッチ」「つま先立ちしよう」など、体を動かすきっかけとなるフレーズが書かれている。
「5種類の健康カードをシャッフルして、定期的に従業員のデスクに置くようにしています。皆仕事の合間や離席するタイミングなど、ふと目に入った瞬間に取り組んでくれていますね。このほかにも『ゼロのつく日は階段チャレンジ』として、エレベーターやエスカレーターではなく階段を使うように声かけをしています。健康への取組を強制したり義務にしたりするのではなく、遊び心を持ちつつ、日常の中で少しでも動くことを意識してもらえるようにと考えています」(村山氏)
今後については、「できれば全社的に運動や食事に関するセミナーを行って、もっと健康に対する意識を高めていきたいと、皆で話しています」と村山氏。
このような健康経営の取組の継続により、従業員の生活習慣が改善し、より健康になれば、仕事の生産性の向上にも繋がっていくだろう。そして、社員一人ひとりの技術やノウハウがサービスの根幹となっている同社にとって、今後、経営面にも良い効果をもたらしてくれることだろう。

村山氏が従業員のデスクに置くという健康カード。「これを見ると『あ、身体を動かそう』と思います」と廣木氏。
村山氏が従業員のデスクに置くという健康カード。「これを見ると『あ、身体を動かそう』と思います」と廣木氏
オフィス入口にも、感染症対策のアルコール・体温計とともに設置
オフィス入口にも、感染症対策のアルコール・体温計とともに設置

健康経営エキスパートアドバイザーより

  • シーイヤー様は世界トップレベルと言っても過言ではない優れた音響技術を持っている企業ですが、今後の継続的発展のために、外部に向けては知名度やブランド力の向上、内部的には優秀人材の確保のための働き方改革や、健康経営を通じた職場改善が必要な状況にありました。
    私が支援を始めた際には、既に健康診断やその後のフォローは適正になされていましたが、健康づくりに関する取組をより発展的なものにするためには、会社が「健康企業宣言」にエントリーすることにより従業員の健康課題の解決に対して主体的に取り組んでもらい、健康づくりに関する推進体制を構築することが必要であると考えました。
    また、具体的な実行面においては、従業員の大半が研究開発業務で座り仕事が多いため改善する必要がありました。
    このような状況を踏まえて、主に以下の三つの施策を実施しました。
    ①健康経営ヒアリングシートによる状況確認と診断報告書による課題と対策案の提示
    ②健康宣言事業(健康企業宣言)への参加と社内推進体制構築に関わる助言
    ③職域健康促進サポート事業を活用した「運動機会の増進」に向けた体験型の助言支援の提案
    そして、これらの支援を実施したことにより、以下のような効果があったと考えています。
    ①健康づくり担当者を中心とした推進体制が整備され、健康意識の向上が図られた。
    ②運動リテラシーの向上により、恒常的に体を動かすことの大切さをご理解いただけた。
    ③「銀の認定」の取得(2023年1月24日付)により、モチベーション向上が図られた。
    今回の取組支援が成功したポイントは、健康企業宣言を行うことで、これまで健康づくり担当者の村山氏が行ってきた取組が全社的なものとして体系化されて、発展的な取組へと改善することができたことだと思います。
    また、研究技術職が大半を占める同社においては、これまでは業務優先の志向が強かったのですが、社員の皆さんが健康リテラシーの向上とともに、健康増進の必要性を実感できたことも大きな成果と考えています。
    今後は、「健康経営優良法人」認定(中小規模法人部門)への申請を是非検討いただきたいと思っています。また、同社の属する業界において、同様の課題を持つ事業者は少なくないと思いますので、成功事例としての情報発信や事業者間の交流を通じた情報共有にも取り組んでいただくことを期待しています。
  • 中村 稔 氏(中小企業診断士)
  • 健診結果や「銀の認定」チェックシートより生活習慣改善が課題として挙がり、中でも個人差の大きい運動機会を増やすためのきっかけとして、セミナー開催が決定しました。個々の運動に対するモチベーションを高め、一過性ではなく継続するために、全員で健康意識の共有も必要だと感じました。
    2回の運動セミナーを実施。運動の阻害要因である「忙しい」「疲れている」「腰が痛い」「ストレス」などを軽減する方法も含め、ストレッチ、セルフマッサージ、歩き方など、仕事中や日常に取り入れやすい内容にしました。今後の継続的な取組を踏まえ、「体を動かすことで心地よさや変化を感じ、運動に対するハードルを下げること」と「業務や健康づくりに対するチームワークのさらなる活性化」を意識しました。
    セミナーをきっかけに、通勤時や仕事の合間に体を動かすなど行動変容が見られています。また、支援を通し、個々の健康意識が高まり、企業として生活習慣改善に取り組む体制づくりができました。担当者が趣向を凝らし新しい提案や情報共有をすることで、個々の自主性にも繋がってきています。
    取組が成功したポイントは、まずは健康づくり担当者の行動力と、会社立ち上げ当初からのチームワークがあった点だと思います。担当者自身がアドバイスをすぐに取り入れ、積極的に情報取集し実行に移しました。また、従業員に対しては、専門家によるセミナー受講という新しい試みを取り入れることにより、ヘルスリテラシーの向上につとめ、健康意識への一体感が生まれました。その結果、「銀の認定」取得後も引き続き従業員の健康を第一に、さらなる取組を継続中です。
    担当者主導だけではなく従業員からの要望や意見も参考にした取組や、セミナーや勉強会の開催、お楽しみ要素を取り入れた体力測定イベントなどを時々取り入れることで、マンネリ化予防及びモチベーション維持にもなると思います。今後も企業の健康増進とさらなる発展を期待いたします。
  • 小原 桂子 氏(健康運動指導士)
(取材:2022年12月)