「住」に関するこだわりを貫く | 株式会社タナチョー

企業概要

企業名
株式会社タナチョー
創業年
1894年(明治27年)
所在地
東京都中央区日本橋室町3-1-10
代表者名
田中廣(代表取締役社長)
資本金
3億8866万円(平成25年12月時点)
売上高
約100億円
従業員数
100名
業種
板ガラス、サッシ等建材の販売・工事施工等

1.畳から高層ビルのガラスサッシまで

代表取締役社長の田中廣氏
代表取締役社長の田中廣氏

 

田中廣代表取締役社長にお話を伺いました


 

■明治末期に長崎で創業
タナチョーは、1894年(明治27年)に初代田中長一が、「田中商店」という名称で長崎で創業した。創業当初は主に畳や木製建具を取り扱っていた。当時ガラスは高級品で一般ではほとんど利用がなく、豊富なイグサや木材資源を活用した建具の製造・販売が主たる事業だった。やがて旭硝子と日本板硝子の特約店として、国産ガラスの販売を手掛けるようになった。


 

■ガラス需要の急増と東京進出
1950年(昭和25年)、本社を取引先との関係により東京に移転した。戦後から昭和30年代にかけて、復興需要を背景に住宅資材の需要は著しく増加した。「夜露をしのぐための建材提供は社会的な使命」として、当初は木質建材を提供していた。その後、英ガラス大手ピルキントン社が開発したフロート製法(※)による生産方法でガラスの大量生産が可能になると、日本国内の一般家庭にもガラスは爆発的に普及していった。ガラス需要の増大に伴い、取り扱う商品は木製建具からガラスやアルミサッシに移り変わり、売上も拡大していった。
※融解した金属の上に溶かしたガラスを表面張力で浮かせ、薄く延ばしてから平らに冷やしていく製法


 

■卸売から工事まで
1973年(昭和48年)、㈱タナチョーに改称する。高度経済成長期に盛んにビルが建設されるようになると、資材の卸売だけでなく職人を育て、高層ビルへの窓取り付けなど最新の工法を取り入れた建築工事も受けるようになった。その後も、一戸建て向けのガラスサッシの販売やリフォーム・リニューアルへの対応など、現在に至るまで事業領域は日々変化している。


2.社会のニーズに応えることが利益に

昭和初期の田中商店
昭和初期の「田中商店」

 

■守り継ぐ社是・社訓
創業当初からの社是は、「商根一徹」。「商魂」ではなく、商人道の根本を意味する「商根」に徹することを社是として掲げている。社訓は「建材製品を中心にして、社会的に必要とされる財・役務を、最適な社内分業及び社外との連携により提供し、結果として社会より利益を戴く」としている。社会的に必要なものを提供していけば、結果として利益を得ることができるという考え方だ。逆にいえば利益が出ないというのは社会的ニーズがない、もしくは社内外の分業が間違った方向に進んでいるので、そこを直していくのが当社の方針で、創業当時からの理念となっている。


 

■長崎での被爆経験から
社是・社訓と同様に、精神的支柱として受け継いでいることがある。まだ本社が長崎市内にあった1945年(昭和20年)8月9日、長崎市に原爆が投下された。爆心地の浦上地区に近かった本社はほぼ壊滅状態で、社員の8-9割が命を落とす事態となった。二代目社長田中正行は、このようなことを二度と繰り返してはならないとして、昭和29年から慰霊法要を開くようになった。現在も毎年京都で慰霊法要を開催しており、「残された者は社会へ恩返しをしなければならない」という訓えは代々受け継がれている。


3.生活必需品である住へのこだわり

現在の本社ビルの様子
現在の本社ビルの様子

 

■移りゆく需要への柔軟な対応
創業当初は木製建具の製造・販売、それからガラス、アルミサッシの卸売、やがて工事を手掛けるなど、当社の事業は大きく変化を遂げている。窓ガラスの提供だけではなく、取引先との関係の中からニーズを読んで事業を変化させることで会社は成長してきた。事業内容については、ガラス・サッシメーカー、ハウスメーカー、ゼネコンなどさまざまな立場の取引先との付き合いの中で決めており、現在の事業はその積み重ねで出来上がったものと考えている。


 

■建材は生活必需品
事業内容は柔軟性を持って変更していく一方で、創業時から今まで変わらず持ってきた考えがある。建材は生活必需品であり、どのような時代でも必要性は失われないとする考え方で、「住」に対するこだわりを持って事業を行っている。建築業の先行きについては厳しい見方もあるが、「住」は「食」と同じように、人が生きていく上での必需品だ。これからも、住空間へのニーズを満たすことで利益を戴くという社是の精神を守っていきたい。


 

■高機能化需要と人材育成
高度経済成長期にビル建設で求められたのは量と速さであり、現在でも都心には当時のビルがたくさん存在しているが、品質が高いとは言い難い。欧米は古い建物をリニューアル・リフォームして使う文化が浸透しているが、日本ではまだ高付加価値化が進んでおらず、建物をリニューアル・リフォームして高付加価値化・高機能化する潜在需要が国内にはまだ多数あると考えている。一方で、建設業界では職人不足が大きな課題になっているが、当社では若手の職人を抱えているし、協力会社でも若手人材の育成を進めている。業界団体へも育成を呼び掛けており、今後の高機能化需要に対応できるような体制を作っていきたい。


4.都心に生きる建材会社として

 

■取引先と地域に根付いた経営を目指す
当社は代理店として、建材を作るメーカーと建材を取り付ける工事店や販売店、その先にある建設会社などさまざまな関係性を構築して商売を続けている。当社は取引先に必要とされることを使命とし、必要性に応じて事業を拡大したいと考えている。同時に地域性も重視しており、今いる地域を大切にするとともに、取引先から愛されることに生きがいを感じている。


 

■事業の拡大より継続性を重視
「住」という事業の中核に対するこだわりは強くもっているが、時代のニーズには柔軟に対応している。建材という住空間に対する事業は、社会的必要性が絶対あると信念を持って経営しており、建築業界全体が厳しい時代であっても、大手ではなかなか手がまわらない事業領域を確保して経営を継続してきた。儲かるから拡大せよというより、ほどほどに安定性を保っていくことを重要視している。


 

■5代目は初の長男相続
当社は現在5代目だが、初めて長男が会社を引き継いだ。事業は必ず長男が引き継ぐものとは決まっていない。事業承継の際は、ふさわしい人間を一族の中で会議を開いて都度決めてきた。代表者にとって事業承継は大きな課題のひとつであり、承継には時間をかけ、ノウハウなどをしっかり受け継ぐ。ファミリービジネスとしての連帯感も強く、一族全体で協力する体制をとっており、今後も継続していきたい。


(取材日:平成25年12月11日)